総合力では近江も引けを取らない。旧チームから不動の正捕手を務める有馬諒が攻守の要で、安定した守備と強打は大会でも屈指の存在。エースの林優樹もスピードは130キロ台ながら、同じ腕の振りからストレートと多彩な変化球を操り、特にチェンジアップは魔球と表現したくなるブレーキがある。伝統的に一人の投手に頼らないチーム作りをしているのも強みだ。昨年夏の甲子園で13打数10安打と大暴れを見せた住谷湧也、早くも来年のドラフト候補として注目されるショートの土田龍空などバッテリー以外もタレントが揃っているのも心強い。春の近畿大会を制した勢いそのままに、夏も頂点まで駆け上がる可能性は十分にあるだろう。

 近年の実績と安定感から考えると八戸学院光星にもチャンスは十分にある。昨年秋の明治神宮大会では選抜優勝の東邦(愛知)を破っており、全国の舞台を多く経験した選手が多いのが強みだ。選抜では広陵(広島)の前に初戦で完封負けを喫したものの、夏の青森大会では6試合で72得点と猛打で勝ち上がった。プロ注目のショート武岡龍世が1番か2番に入り、中軸の近藤遼一、原瑞都と長打力のある選手が揃う打線は迫力十分で、6試合で2失策と堅実な守備も光る。総合力では東北勢でも頭一つ抜けている印象だ。

 同じ東北勢では花巻東も上位を狙える実力校だ。1年時から大器と評判のエース西舘勇陽の成長が大きい。この夏はリリーフでの登板が多かったが、徐々に調子を上げて準決勝、決勝では見事に試合を締めた。中村勇真、水谷公省の中軸にも力があり、得点力も高い。岩手大会の初戦でいきなり9回裏まで1点リードを許すという厳しい展開を勝ち抜いてきた経験も強みだ。

 近年の甲子園での強さという意味で忘れてはいけないのが2015年選抜の優勝校である敦賀気比だ。レギュラーのうち4人が下級生という若いチームだが、笠島尚樹、御簗龍己の2年生バッテリーを中心とした守りには安定感がある。打線の中心は4番に座る木下元秀。昨年夏の甲子園ではエースとしてマウンドに上がったが、新チームでは主に外野手としてプレーし、打者としての能力が大きく開花。準決勝の福井商戦では弾丸ライナーの一発を放ち、チームを勝利に導いた。決して圧倒的な勝ち方をするチームではないが、接戦をしっかりとものにできる試合巧者ぶりは不気味だ。

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大会中に加速度的に成長するチームにも期待