■東京と大阪で闇営業のスタイルが違う

吉本興業は管理するタレントの数が膨大なだけに、これまで多少は目をつぶっていた部分があったようだ。在阪局のディレクターは言う。

「大阪は東京よりも狭く、地元の地縁や友人関係で頼まれたら断れないという風土もあり、多少の闇営業は許されてきた。暴力団関係者への闇営業も昔は多かったと聞いていますが、だいたいは中小企業の社長や、飲食店・レジャー施設の店長やオーナーから声がかかるパターンです。関西だとテレビにちょくちょく出る中継芸人でも月収30万円に満たない人もいて、それでも妻子を養わないといけないですからね。現場のマネージャーは薄々、知っていても見て見ぬふりが多いと思います。しかし、在阪の吉本芸人によると、最近は関西の吉本も闇営業を厳しく取り締っているらしいですが……。一方、東京にいる芸人たちは、テレビ出演やお笑いライブなど事務所を超えた芸人同士の付き合いが多いので、そういうところから話が回ってくることが多いそうです。入江さんのように、テレビにレギュラーがあるわけじゃないけど、人脈が広い芸人さんが手配しているケースも多いですね」

 今回の騒動で出演した芸人たちは口を揃えて「お金はもらってない」とコメントをしている。現状で「金銭の授受さえなければセーフ」ということになっているようだが、ダウンタウンの松本人志は「ワイドナショー」(フジテレビ系、6月9日放送)で「なんらかのお金は出ていると思う」ともコメントしていた。依頼主の詐欺グループのメンバーたちが塀の中にいる限り、真相が明らかになることはないだろう。

 かつて芸能事務所で芸人部門を担当したこともある、お笑い現場評論家のKENJI氏は今回の騒動についてこう解説する。

「今回の件は、吉本は把握しきれなかったと思います。金銭の授受は当人同士しかわからないのでなんとでも言い訳できますし、入江さんのように自分の会社を持っていたら事務所側は管理できません。そもそも、なぜ闇営業をするのかというと、入江さんたちのようなあまりテレビの仕事などがない芸人は、『事務所は仕事を持ってこないのに、自分でとってきた営業を事務所に通すとお金が抜かれてしまう』と思っているからでしょう。通さずにやったら100%自分の手元に入るわけですからね。しかし所属契約がある以上、事務所に利益をもたらさない闇営業は完全にご法度です。芸人たちは売れてない時代に、事務所が頑張ってバーターでキャスティングしたり、知名度を上げるための努力をしてきたはず。メディアの仕事が入っている時は自分のおかげ、オファーが来ない時は事務所のせい、と思う芸人がいるならそれは間違いです。個人的には、芸人さんたちは事務所に所属しているメリットをもう少しよく考えてほしい」

 今回の騒動は、お笑い界にとって“氷山の一角”かもしれない。ただし、多くの芸人にとっていい見せしめになったことはたしかだ。(今市新之助)

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