阪神・矢野監督 (c)朝日新聞社
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 昨シーズン、まさかの最下位に沈んだ阪神。今季も開幕直後は負けが込んでいたものの、徐々に調子を上げて上位争いに食い込んでいる。そんなチームの再建を託されたのは矢野燿大監督だ。2016年から2年間一軍でコーチを務め、昨年は二軍監督としてチームをファーム日本一に導いた。そこで矢野阪神のこれまでの戦いぶりから見えてきたもの、これから優勝を狙ううえで重要になりそうなポイントを検証してみた。

 ここまでの矢野監督の選手起用で目立つのが、昨年までの強みをそのまま生かそうとしている姿勢だ。新監督が就任すると自分のカラーを出そうとして、前監督が起用してこなかった選手を抜擢するケースが少なくない。俗に言う『●●チルドレン』と呼ばれるような選手たちである。

 しかし、矢野監督は無理に自分のカラーを出そうとするのではなく、金本知憲・前監督の遺した戦力を上手く活用しているように見える。その最たる例が正捕手の梅野隆太郎である。梅野は昨年、プロ入り5年目で初めて規定打席に到達し、ゴールデングラブ賞も受賞したものの万全の実績とは言い難い。

 そんな状況であれば、矢野監督が同じ捕手出身ということを考えても、自分の色を出すのであれば他の捕手と梅野を競わせることも十分に考えられるが、ここまで完全に梅野を正捕手として固定しているのだ。開幕直後に左足薬指を骨折しても梅野を正捕手から外さず、梅野本人もここまで攻守にわたる活躍を見せてその期待に応えている。今年で28歳とまだ若く、打力もある梅野が正捕手としての地位を完全に確立すれば、来年以降の戦いにも大きなプラスとなることは間違いないだろう。

 そして、もう一つ目立つのが外から補強した選手に対しても過剰に期待することなく、見極めながら起用しているところだ。昨年オフ、FAで獲得した西勇輝は先発ローテーションの中心となり、新外国人のジョンソンもセットアッパーの一角として期待通りの働きを見せている。その一方で、先発候補として見られていたガルシアは開幕から調子が上がらないと見るとすぐに二軍での調整を決断。中軸として期待されていたマルテは逆に無理して開幕から起用せず、ファームでの状態を見極めてから昇格させている。高額年俸で獲得した新戦力だからといって特別扱いをしていないという点は、非常にバランス感覚がとれている印象だ。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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