その意味では、菅氏の暴言は「立憲民主の本音」ともいえる。急いで野党を結集して次の総選挙で政権交代を目指すのではなく、“なんとなく”立憲民主に人が集まることを期待している。事実、「国民民主に未来はない」(立憲民主中堅議員)と見ている議員も多い。枝野氏を脅かす政治家がいないことが、立憲民主が野党内で独自路線を歩む元凶になっている。ある野党議員は言う。

「枝野さんや菅さんは、民主党政権の時に小沢グループが気に入らないから排除しようとして失敗して民主党を崩壊させた。今の立憲民主は、前回の選挙で自分たちを排除した国民民主が気に入らない。また同じ事をやっている。一度離党した人間も、選挙区のライバルも次々に受け入れている度量のある自民党の二階(俊博・幹事長)さんを見習ってほしいくらいだ」

 だが、結党当初は政党支持率が10%を超えていた立憲民主党も、最新の読売新聞の調査では3%まで下がった。さらには、菅氏の発言が批判されたことで風向きも変わりつつある。立憲民主の大串博志議員は、自身のブログで<『野党同士でにらみ合っていることはお互いにマイナス』という認識が広がってきている>と書いている。

 民主党政権時代、菅氏や枝野氏とともに党内で「反小沢抗争」を繰り広げた政治家に、昨年10月に死去した仙谷由人・元官房長官がいる。「数の論理」が支配する政治の世界では、当時の民主党で最大勢力だった小沢グループの意向を無視して政治を進めることは「非常識」なことだった。その仙谷氏は政治家を引退した後、党内抗争の激化を止めることができなかったことを振り返り、「酒でも飲みながら、面と向かって議論していれば、結果はもっと違っていたかもしれない」と語っていた。

 弱体化した野党を救うために、枝野氏や菅氏をはじめ、民主党政権で要職を務めた政治家たちは、かつて対立した仲間達と「酒を飲んで本気の議論」をするぐらいの気持ちがあるのだろうか。それができなければ、立憲民主はかつての共産党と同じように「安倍政権の補完勢力」としての道を歩むことになるだろう。