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3月10日。東京都心とは思えない緑深い公園を、息を切らせて走る人々がいる。子どもたちや、年配の方の姿もある。ゼッケンをつけて、ゆるやかにカーブを巻く坂を登り、小高い丘の麓をぐるりとめぐって、また歯を食いしばって戻ってくる。
実はこの丘、東京・山手線内で最も高い山、「箱根山」なのである。標高44.6メートル。山頂からは新宿の副都心を間近に望む。そんな箱根山を周回する地域のイベント、「箱根山駅伝大会」も今年で10回目を迎えた。年々規模が大きくなっているが、今年は参加者の顔ぶれが少し違っていた。日本語学校の生徒たちが初めて参加したのだ。
新宿区・若松地区の恒例となった、毎年春の駅伝大会。箱根山公園を駆け抜ける1.2キロのコースを、ひとチーム5人でたすきをつなぎ、順位を競う。小学生、一般、町会・自治会と3つの部に、合わせて62チームが参加。大会名誉会長の吉住健一新宿区長もあいさつに登場した。
地元の学生たちや趣味の集まり、友だち同士……老若男女さまざまなチームが参加し、運営も若松地区の人々がボランティアで手伝う。いかにも地域の手づくりイベントといった様子だ。
この駅伝大会に、はじめて参加したのは、若松地区と隣接している、大久保地区にある日本語学校に通う留学生たち。
新宿・大久保といえば「コリアンタウン」のイメージが強い。韓国料理のレストランが林立し、韓流アイドルのグッズを売る店やライブ会場なども数多く、近頃はコリアンホットドッグともいわれる「ホットク」を求めて日本人女子が大行列をなす。
その一方で、大久保にはベトナム人やネパール人といった人々もたくさん住み、働き、暮らしている。バングラデシュやスリランカ、中国、中南米などなど、歩いている顔ぶれは実に多彩だ。さまざまな国の食材を売る店、海外送金、外国人向けの不動産屋、現地ローカルそのままの食堂、モスクや教会も並ぶ。そして語学学校も多い。