「『おばあさんじゃなくてよかったぁ』って。はっきりそう言われたのよぉぉ」と目の前のワイングラスの脚を強く握りしめて語るのは私の学生時代の同級生M子。
バツイチのM子は現在、絶賛婚活中だ。童顔で色白ぽっちゃり巨乳の彼女は年齢よりずっと若く見え、40代前半でも通りそうなルックス。事務の仕事をしているのだが、本人曰く「まったく出会いがない」らしく、現在、婚活アプリにはまっているのだそう。
私は利用したことがないので、彼女から聞いた話を総合すると、いま2種類のアプリを使っているのだが「Aというアプリは年収や仕事なんかもちゃんとわかるんだけど、Bは写真くらいしかわからないの。でもお手軽なBのほうが入りやすいのか、Aでは100人くらいしか来なかったのが、Bは700人も」と。
最初のセリフの意味は、Aでマッチングされた男性と待ち合わせして、いろいろ話しているうちに年齢の話になり、56歳のバツイチで同世代の女性を探しているのだというその男性がM子に「いやあ、みなさん結構昔の写真を使っているので、50代で美魔女だなあ、と思って会ってみて近くで見ると首とか手がシワシワで結構おばあさんなんですよ」と笑いながら打ち明け、彼女の顔をまっすぐ見つめながら、「でもM子さんは肌ももちもちで首にも手にも皺がなくて、ぜんっぜん、おばあさんじゃなくてよかったぁ。54歳でそれはすごいです。そのくらいの年齢だと実際来るのはババアばっかなんですよ」。そうのたまわったそうだ。
「54歳って、世間ではもうおばさんじゃなくておばあさんのくくりなんだ、私たちってもう初老なのね、って哀しくなったわよ」。ぐいっと白ワインを飲み干すその喉は白くてきれいだ。「でも、そういうその人もね、かなり昔の写真使ってて、あったらジジイなわけ。ジジイとババアのマッチング……。ジジイといえばね、私に、イイネを押してきたのは下は22歳のもろマザコン男から、上はなんと80歳って人もいたの。80歳だなんてからにはすごい資産家の後妻業に誘われているのかな、って思わず自己紹介を確認したら『年金生活ですが、シルバー人材派遣センターで週に2日働いています』って横に杖ついたヨボヨボの写真。やだもーーー!婚活市場では私たちなんてそういうのが平気でアプローチしてくる年齢なんだと落ち込んだわよ。リアルジジイの彼氏なんて絶対いやだーーー!」