武蔵野市役所(21年12月)
武蔵野市役所(21年12月)

──居住ですか。

 居住ですよね。武蔵野市自治基本条例の場合、市民の定義は住んでいる人、勤めている人、学んでいる人、つまり「在住、在勤、在学」と定めています。でも「住民」と言ったときは「住んでいる人」です。以前は住民登録と外国人登録は別でしたが、外国人登録法が廃止されて住民登録と一緒になり、現在は日本人も外国人も同じ住民票です。「住んでいる人」に国籍の要件は一切ないんです。

 その「住んでいる人」の中から住民投票を行う場合に国籍をどう考えるか。5年ほど前に西尾勝先生(東京大学名誉教授、行政学者)を座長とした自治基本条例に関する懇談会で議論された中で、「住民」は国籍を問われず、投票資格者を国籍で区別する合理性はないということでまとまり、その後、3カ月以上住んだ住民であれば国籍を問わず対象として、議会に提案したのが条例案でした。

──どんな問題意識から外国人に投票権を?

 逆にどうしたら住んでいるのに意見を言わせない、という論理になりますか。市長や議員を選ぶ選挙権と住民投票権は異なると私たちは考えています。住民投票の結果に法的拘束力はありません。そこを混同して、「外国人に参政権を与えようとしている」と抗議してくる人がいたのはとても残念です。

 議会に対する陳情もありますが、陳情書に国籍を書く欄はないので、どの国籍の人でも出せます。陳情と住民投票権は近いものと考えています。

 条例案をめぐっては、市議会で「外国人への投票権付与には一定の基準、区別が必要」「議論が拙速」といった声が上がったほかに、街頭やネット上で反対運動が過熱。市役所周辺で街宣車による抗議も連日のようにあった。

──反対意見には「外国政府の影響力が強まる」との懸念もありました。

 人口約15万人の武蔵野市の外国人比率は2%、3千人です。21年の条例案では、住民投票を行うには投票資格者の4分の1の事前署名が必要で、2%では全然足りない。約11平方キロメートルしか面積がない小さな自治体で、大量の外国人が市外から住民票を移すことも考えにくく、外国政府の影響力が強まることはありえません。

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