カルロス・ゴーン氏(c)朝日新聞社
カルロス・ゴーン氏(c)朝日新聞社
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日産の西川社長(撮影/西岡千史)
日産の西川社長(撮影/西岡千史)

 急転直下の展開だ。東京地検特捜部は21日午前、会社法違反(特別背任)の疑いで日産自動車のカルロス・ゴーン前会長(64)を再逮捕した。20日には、東京地裁が特捜部の勾留延長申請を却下したばかり。「異例中の異例」の棄却を受けて、東京拘置所にはゴーン氏の保釈の瞬間を捉えようと報道陣が次々に集結していた。再逮捕は、そうしたなかで行われた予想外の出来事だった。

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 逮捕容疑は08年、リーマンショックの影響でゴーン氏の資産管理会社が約18億5000万円の損失を出し、それを日産に負担させた疑いだという。

 だが、事件の“謎”は解決されるどころか、さらに深まっている。というのも、ゴーン氏による損失付け替えは11月下旬からメディアで繰り返し報道されてきた。ゴーン氏は、付け替えは証券取引等監視委員会に違法の可能性があると指摘されて断念し、「日産に損害は与えていない」と話しているという。損失付け替えを考えたのも10年以上前の出来事であり、立件は難しいと思われていた。

 その状況で、特捜部は3度目の逮捕に踏み切った。報道された新しい情報では、ゴーン氏は日産への損失付け替えを断念したあと、サウジアラビアの知人に信用保証の協力を得て、日産から自分の会社に損失を移した。その後、その知人の会社に、日産の子会社を通じて09年6月~12年3月の間に4回にわたって計1470万ドル(現在のレートで約16億円)を入金させたという。会社法の特別背任罪の時効は7年だが、ゴーン氏は海外滞在が多いので時効が成立していないと特捜部は判断したと思われる。

 これが事実なら、ゴーン氏は日産の資金を16億円も外部に渡して損失を与えたことになる。青山学院大大学院会計プロフェッション研究科の町田祥弘教授が指摘する。

「逮捕容疑のうち、以前から報道されていた、ゴーン氏が損失の付け替えを一時的に日産に負担させた件は、指摘を受けた上でとはいえ、結果として日産側に実害は生じていない。特別背任で逮捕されるほどの事件とは思えませんでした。しかし、報道されているように、信用保証をしてくれた知人に会社の資金から約16億円を支払っていたとなると、話は大きく変わります。自らの私的な目的のために会社の資金を流用して損害を与えたとなれば、逮捕も致し方ないでしょう。特捜部に批判的だった海外の見方も変わってくると思います」

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特別背任の立証は難しい