最近の優秀なベンチャー企業経営者には、下手に官民ファンドから支援を受けると、できが悪い官僚に付き合わなければならなくなるという理由でこれを嫌がる人も増えている。私が知る若者も、米国でベンチャーを立ち上げると、政府系ファンドから声がかかったという。しかし、話しているうちに、官僚たちのレベルがあまりに低いことに気づいた。話をちゃんと理解できないし、反応が遅すぎる。これでは、とても自分たちの事業についてこられないなと思って、丁重にお断りしたそうだ。手続きが煩雑で手間と時間を浪費するだけなら、自力で資金を調達したほうがいいというのは、当然の論理だろう。
また、最近、米国で頭角をあらわした日本人の若手ファッションデザイナーが事業拡大のため出資者を探す際、CJ機構を知人に勧められたそうだ。しかし、その若者の答えは、「僕がやってるのは、ただのファッションですよ。そんなことに国が貴重な金を使うんですか? もっと必要な分野があるんじゃないですか? そんなものの世話になるのは、僕は嫌です」。
この答えこそ、この問題の本質ではないだろうか。
賢明な超一流の若手起業家は、日本の官民ファンドを相手にしない。こうした風潮はさらに強まっていくだろう。そうなると、この先は、政府にしか相手にしてもらえない、本当にできの悪い民間企業ばかりが、官民ファンドのまわりに集まってくることになる。
もう一度言おう。
やっぱり、官民ファンドは、即刻全廃した方が良い。(文/古賀茂明)