2016年には、日産自動車、早稲田大ビジネススクール、スイスのビジネススクール IMDの共同プロジェクトで「逆風下の変革リーダーシップ養成講座」が行われ、ゴーン氏が講演したこともあった。
2位の東京大も、日産自動車との産学連携が盛んに行われている。東京大学宇宙線研究所の地下施設「大型低温重力波望遠鏡KAGRA」は、日産自動車の電気自動車「e-NV200」を導入している。同研究所所長は、ノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章氏だ。
ゴーン氏逮捕直後、記者会見で時の人となった西川廣人社長は、東京大学経済学部出身。1977年に入社した。
3位は慶應義塾大だ。OGには国内事業を統括する星野朝子専務執行役員がいる。日産自動車初の女性専務執行役員で、テニスの大坂なおみ選手に「GT-R差し上げましょう」と大盤振る舞いしたことで話題となった。
星野氏は大学卒業後、日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)に入行。アメリカの大学で経営学修士(MBA)を取得し、マーケティング・コンサルタントの仕事をしていた。日産自動車から社内向けのプレゼンを依頼された際、ゴーン氏の知遇を得る。
「ゴーンは私のプレゼンをすごく気に入ってくれたみたいで、プレゼンが終わった後、私に直接、日産入りをオファーしました。(略)ゴーンはこう続けました。『私はこの会社の会議で女性と話したことがない。この会社はあまりにも男性偏重だ。経営というのは、女性の視点や外国人の視点などさまざまな視点があって初めて成り立つ。日産の弱みはそこだ』と。ゴーンにそこまで熱心に語られたら、もう首を横に振ることはできませんでした」(「NIKKEI STYLE」2017年4月17日)
ゴーン氏は慶應にラブコールを送ったことがある。2012年6月、ゴーン社長(当時)は慶應義塾大学ビジネス・スクールで講演したことがあり、当時の様子がウェブサイトにこう記されている。
「ゴーン社長は、グローバルビジネスにとって有望な人材を発掘し、採用していくことはとても重要で、同大学のような学校の存在はその上で大きな手助けになると述べました」(日産自動車ウェブサイト2012年6月20日)
6位の横浜国立大は、日産自動車本社の所在地・神奈川県横浜市にある大学だけあって、毎年、多くのエンジニアを送り出している。地の利を生かして、両者で自動車関連技術の研究開発や人材交流を行ってきた。
横浜国立大は名車「スカイライン」の開発責任者、桜井眞一郎氏 (故人)の出身校でもある。「ミスタースカイライン」「スカイラインの父」として、自動車の技術開発者にとって憧れの存在だった。
これから、日産自動車はどこへ向かうのだろうか。今後のかじ取り役になるであろう執行役員のうち、副社長数人の簡単なプロフィルを紹介しておこう。
坂本秀行副社長は東京工業大工学部機械物理工学科出身。ルノーブラジル社出向管理職などを経て、2008年に執行役員となり、生産技術本部担当、製品開発担当、生産事業担当などを歴任している。
山口豪副社長は京都大大学院工学研究科機械理工学専攻修士課程修了。日産テクニカルセンターノースアメリカ会社社長などを経て、2008年から執行役員となり実験技術開発本部担当、アライアンス技術開発担当を歴任している。
繰り返すが、日産自動車には優秀な若手社員がたくさんいる。新しい日産自動車を引っ張っていくのは、彼ら若手である。がんばってほしい。