しかし、優勝翌日から生活は一変した。今までテレビで見ていただけの番組に10本、20本と出演が決まっていく。当時、既に「中川家」は関西では売れっ子としてしっかりと活動し、収入もそれ相応にあったが、それでも優勝を機に月収は7倍になった。
「それまで劇場で漫才をやって、近くの食堂で飯食って帰るだけの生活。ただ、いきなり『タクシーチケットって、そんなんあるんや』『叙々苑弁当って、なんやねん?』『えっ、この人、女優さんやんな…。普通に話しかけてくるやん』とか、初めての波がたくさん来ました。今まで会う女性と言えば『今いくよ・くるよ』さんに末成由美さん、未知やすえさん、「ハイヒール」さん、なるみさんだけやったのに(笑)」(剛)
また、第5回、2005年に優勝したのが「ブラックマヨネーズ」。今でこそ、押しも押されもせぬ地位を得たが、当時、大阪の若手だった2人の立ち位置は微妙だった。
ネタの面白さはピカイチ。これは芸人仲間も認めるところ。ただ、テレビ映えしたり、女性ファンからワーキャー言われる“華”がない。いわば、道場でのケンカの強さはピカイチ。ただ、なかなかスターにはなれない。悩んだ挙句、ボケの吉田敬が浮世離れしたゴージャスな毛皮を着て舞台に立ったり、何とかして色を出そうと試行錯誤もしていた。
そこに「M-1」というシステムが誕生し、ただただ、ケンカの強さをガチンコで競う場ができた。そうなると、いきなり光り輝いたのが「ブラックマヨネーズ」。当時、僕はデイリースポーツの演芸担当記者として、毎年「M-1」の優勝者予想をしていた。自慢ではないが、毎年ほぼ的中させてきたが、最も予想が簡単というか、すぐに答えが出たの05年。それくらい、実力がずば抜けていた。
今年の戦いに目を移すと、結成15年以内という出場資格的にラストイヤーとなるのが「スーパーマラドーナ」と「ジャルジャル」。まさに人生をかけた真剣勝負が12月2日に展開される。
当事者にとっては、すさまじい圧がかかるステージ。ただ、そこを潜り抜けたコンビだけが、やっとスターへの階段の一歩目に足を乗せることができる。(芸能記者・中西正男)