今回の安田さんの件で、私が驚いたのは、大手メディアが安田純平さんのインタビューをトルコから帰国する飛行機の中で行っていたことである。また、今回、成田空港に降りた安田さんの様子も多くのメディアが流していた。

 2004年当時、3人の釈放が分かった直後、弁護団で議論をし、私はドバイの空港に電話をして、解放されたばかりで精神的に厳しい状態にあると思われる彼らがメディア・スクラムにあわないように、機内で取材を受けるなどということがないように、と調整した。3人の体調への懸念もあり、到着した羽田空港でもできる限りメディアに触れることのないように3人の動線などを弁護団は空港の担当者と調整した。この時は、日本政府がむしろ3人の姿がメディアに映りやすいように道を変更したため、弁護団から抗議も行った。実際に、空港で3人のうちの1人が倒れこんでしまった。3人は帰国直後に医師の診察を受け、フラッシュバックなどの恐れがあるため、しばらく休養した方が良いとの医師の所見もでた。

 今回の安田さんの件では、メディアなどの対応は適切か。

 拷問状態におかれ、3年以上もの間いつ殺されるやしれない生活においては、精神的な負担は想像を絶するものであっただろう。一見落ち着いているように見えたからといっても、いつPTSDの症状が出るかわからない。拘束されていた時の話を繰り返し質問されれば、精神状態が悪化することも大いにありうる。ひどければ希死念慮に襲われることも十分に考えられる。

 誘拐・拘束された人は「被害者」である。このことを出発点に考えれば、まずは、被害者に二次被害を与えないように配慮することが需要である。事実や背景を報道するというメディアの使命については、被害者の精神的安定を待ってからでも十分果たせる。

◆帰国後のバッシングの方がつらい

 2004年の時、空港で本人たちの姿が見えたとき、少なくない大手メディアが遠くから発した言葉は「お帰りなさい」「よかったですね」ではなく、謝罪を求める言葉であった。3人の帰国直後、体調を崩している本人たちに代わって家族の会見を行うこととしたが、その家族の会見でも、「謝罪はないのですか」というのが大手紙記者からの最初の質問であった。

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