大阪桐蔭の春夏連覇で幕を閉じた第100回全国高校野球選手権大会。今年も多くのドラマが生まれたが、中でも一番のトピックスはやはり金足農の快進撃だろう。大会前の評価は決して高いものではなかったが、次々と強豪を打ち破り秋田県勢としては、実に103年ぶりの決勝進出を果たしたのだ。惜しくも優勝はならなかったものの、地元秋田では世代、性別を超えての盛り上がりを見せた。またその一方でエースの吉田輝星が地方大会から選手権の準決勝まで一人で投げ抜いたことに対する疑問の声も多く上がり、日程緩和や球数制限の導入などの議論も活発になっている。
そこで今回は自身も東北の宮城県出身で、現役時代には2度夏の選手権に出場し、選手、コーチ、スカウトとして長くプロ野球界に携わってきた元ヤクルトの八重樫幸雄氏に今大会の印象、近年の高校野球について感じたことについて話を聞いた。
-八重樫さんは高校時代、仙台商で夏の甲子園に出場され、3年夏にはベスト8にも進出されています。その大会では三沢(青森)が太田幸司投手の活躍で決勝進出を果たしており、東北全体でも躍進の年と言えますね。八重樫さんご自身は、当時どのようなことを考えながらプレーしていたのでしょうか?
「自分たちにとってはまず甲子園に出ることが目標。そこから勝ち進むことまでは全く考えていなかったです。今と違って1県1代表ではなかったですから。1年の夏はファーストで甲子園に出ましたが、投手のレベルは高いと感じました。あと2年の時に初めて関東に遠征に行ったんですが、サインプレーなんかで自分たちが見たことのないような動きをやってくる。こっちはそんな細かい野球はやっていませんから、そういう部分に面食らいましたね。ただ、そこで高いレベルの野球に触れたことが3年の時に生きたと思います」
-3年夏は翌年のドラフト1位で広島に入団する佐伯和司投手を擁する全国的な強豪である広陵にも勝っていますね。
「その前の年の秋の東北大会で太田幸司のいた三沢と対戦したんですね。三沢は、米軍基地のある町だからアメリカ製のバットを使っていたのをよく覚えています。ただ野手はそんなに凄くなかったですけど(笑) ただ、太田は全然違いました。速くて重い。それまで見たことのないボールを投げていましたね。太田は2年の夏にも甲子園に出ていましたが、それもよくわかりましたね。この時に太田のボールを見ていたことがあったので、佐伯のボールも打つことができたと思います」