東京五輪はハッカーの“自己顕示欲”刺激? リオが狙われなかった意外な理由

AERA
 倍々ゲームで急増中なのは我が国を狙うサイバー攻撃。「島国だから」は昔の話。世界のブラックハッカーの矛先はニッポンに向く。厳しい試練となる可能性があるのが2020年、東京五輪・パラリンピックだ。

【図】観測でとらえた国内へのサイバー攻撃

 サイバー攻撃の世界は急進的なため、3年後を見通すのは難しい。ただ、従来の五輪ではあり得なかった攻撃に見舞われるのは間違いない。

 というのも、世界的なビッグイベントになると、政治・金銭を目的にするブラックハッカーに加えて、大量の便乗犯、自己顕示欲に駆られて攻撃をする者が湧いて出るのが常だからだ。

 16年開催のリオ五輪。この時はさほど激しい攻撃はなかった。ハッカーコミュニティーから「突貫工事のリオ五輪のシステムを打ち破ったところで自慢にならない」と軽視されていたようだ。だが東京五輪はどうか。国際社会では「日本はどの国より抜かりなく完璧な五輪運営を行う」との見立てがもっぱら。こうなると、自己顕示欲が旺盛なブラックハッカーが東京五輪のシステムを打ち破ったとなれば、コミュニティーで一目置かれる。そのため、ここぞとばかりにトリッキーな攻撃を仕掛けてくる可能性があるのだ。

 何が標的か。予断を許さないが、五輪では映像中継が最もお金の動く領域。世界中の人々が注目する映像サービスが標的になる可能性もある。この点では専門家も「今までも守りきれたのだから、東京五輪も守りきれるはずだ」という見方の一方で、首肯しながら「スパイ天国で、しっかりした情報機関を持たない日本では、場当たり的な対処になり、何が起きているのかわからない状態になる」と憂慮する見方もある。また、本当のテロは警戒が厳重な五輪のシステムは狙わず「警戒が薄くなっているシステムを狙う」と指摘する専門家もいる。つまり期間中に騒動を起こせば、効果は同じというのがその理由だ。

 さらに20年になると、ウェアラブル端末やIoTが普及し、電力やガス、水道などのインフラシステムにもITが組み込まれるようになるため、テロリストがこうした施設を狙うことも十分あり得る。専門家の間でも認識が分かれてはいるが、激しいサイバー攻撃が波状的に来襲するという点では共通する。

 こうした状況を食い止めようと、産学官あげてセキュリティーの高度化に努めているが、いわゆる“いたちごっこ”で、サイバー攻撃を撲滅するには程遠いのが現状だ。仕方のない面もある。というのもネットなどサイバー空間における攻める側と守る側の力関係は、攻める側のほうが圧倒的に優位なのだ。

 守る側は空間全体を網羅しなければならない。ゴールを決められれば失点するし、守り抜いたとしても得点にはならない。そういう意味で、セキュリティーの技術者はいや応なく神経戦を強いられる。まして一般の個人が自力でサイバー攻撃から身を守るなど無理な話で、狙われれば必ずやられる。

 ではどう身を守るか。一つはクレジットカード番号をはじめ、住所や電話番号、私的な写真など機密情報、個人情報をむやみにネットに上げないことだ。ブラックハッカーはかすかな個人情報の臭気をかぎわけ、仕掛けてくる。eコマースなどの利用で個人情報を出さざるを得ない場合も、用が済んだら、すぐにそれらの情報をパソコンやスマホから削除する。ブラックハッカーは「パソコンやスマホに残ったままの情報を盗む」ためだ。端末に情報がなければ盗みようがなく、被害は抑えられる。

 また、ウイルス対策ソフトも有効だ。検知率10%台というものもあり、不要論も聞かれるのだが、最悪の被害をもたらす流行のウイルスはシャットアウトできる。

 監視社会に詳しい富山大学の小倉利丸名誉教授はこう訴える。

「勤め先の企業の対策も家庭向けの参考になる。大手企業が個人情報を漏洩する事案も続いている。国家にも情報が渡っている今、個々人が、意識やライフスタイルを見直すぐらい、注意すべき状況です」

(電経新聞編集長・北島圭)

※AERA 2017年12月11日号より抜粋
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