「わが子には算数好きになってほしい」「将来、算数の勉強で苦しんでほしくない」と考える親は多いもの。少しでも早く慣れてほしい一心で、幼児期から計算ドリルなどを先取り学習させる熱心な人もいるでしょう。横浜市にある算数中心の学習教室「あるが学習教室」塾長で、幼児さんすうシニアインストラクターの資格を持つ有賀敦子さんは、「算数力をつけるためには、小さいうちから手を動かし、試行錯誤する体験が大切」だと言います。「AERA with Kids夏号」(朝日新聞出版)では、手を動かす遊びが大切な理由や幼児期から身につけておきたい数の概念、オススメの教材について教えていただきました。

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 私は、算数の問題を考えるときに手を動かすことはとても大切だと考えています。なぜなら手作業は、子どもの脳の発達を促し、創造性を育んでくれるからです。かつて人間が手で道具を作り、道具を使うことで発展してきたように、手作業は創造性を育むもの。創造性が高まれば、どんな難問でもまずは自分なりに解決してみようと試行錯誤するようになります。この姿勢こそが算数の基本的な力につながるのです。

 例えば「ポリドロン」。一度組み立てた後、展開して、どのような製図にすれば紙の無駄がないかを考える過程で立体図形の感覚が養われるのもその一つです。手を動かして考えるうちに、算数が好きになっているはずです。

◎ポリドロン/標準セット
東京書籍 1万4630円(税込み)
 合わさる部分がしっかりしているので組み立てたときの安定感は抜群。子どもたちが楽しんで組み立てるので、25年間愛用してきました。ポリドロンのおかげで、中学の数学で立体の展開図や三平方の定理の証明が簡単に解けたという声もよく耳にします。
※低学年~

 幼児期から算数で身につけておきたいのが「数の概念」です。ただ「1、2、3、4…」と数字を言えるようになったり、「2+3=5」と言えたりするだけでは概念を理解していない可能性も。数というのは抽象的です。たとえば、1と言ったら一つのイチゴ、2と言ったら二つのイチゴを示していることがわかるように、数とそれを表すモノを頭の中で結びつけられることが大切になってきます。それがわかってから、たし算やひき算の考え方を理解できるようにしていきます。

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黒澤真紀
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