青木校長はこう言い添える。

「本校の生徒たちは『自分が、自分が』という自己主張をあまりせず、とにかく人の話をよく聴きます。誰かの意見、他者の声に注意深く耳を傾ける姿勢がこの学校の在校生たち、卒業生たちの成長の原動力になっていると思います」

■アイデンティティーを喪失しやすい時代の中で

 わたしはこれまでも何度か普連土学園を取材し、在校生たちや卒業生たちと話をする機会があった。同校で過ごした女性たちは、落ち着いた雰囲気を身にまとい、一度立ち止まって物事をしっかり考える「思慮深い」性格の持ち主が多いように感じられる。これは彼女たちが中高時代に「沈黙」の時間を体験してきたことと無縁ではないだろう。

 山下さんによると、普連土学園の生徒たちには一脈相通じるこんな特徴があるという。

「芯のある子が多く、それを互いに認め合う雰囲気がある。特定の仲良しグループだけに属すのではなく、みんな交友関係が幅広いですね。少人数教育であるという点も大きいのでしょう」

 冒頭に挙げたが、現代に生きる子どもたちは、同調圧力を日々感じたり、他者からの承認欲求が強かったりして、自己のアイデンティティーが揺らぎやすい環境に置かれている。

 そういう時代であればこそ、「沈黙」の時間は、自身の心と向き合える贅沢なひとときになるのではないか。伝統的な普連土学園独自の教育観は、いまの時代にマッチしているのだ。

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矢野耕平
矢野耕平

矢野耕平(やの・こうへい)/中学受験専門塾スタジオキャンパス代表・国語専科 博耕房代表。1973年生まれ。著書に『令和の中学受験 保護者のための参考書』(講談社+α新書)、『中学受験で子どもを伸ばす親ダメにする親』(ダイヤモンド社)、『13歳からのことば事典』(メイツ出版)、『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』『男子御三家 麻布・開成・武蔵の真実』(ともに文春新書)、『LINEで子どもがバカになる「日本語」大崩壊』(講談社+α新書)、『旧名門校 VS 新名門校』(SB新書/SBクリエイティブ)、『早慶MARCHに入る中学高校』(朝日新書)など多数。

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