■日本唯一のクエーカー系中高一貫校
現代は「情報過多」の時代と言われる。一説によると、いまの子どもたちが受け取る1日の情報量は、江戸時代の人たちが目にする1年分のそれに相当するという。スマホでLINEやSNSにどっぷりと漬かっている子どもたちは、他者のことばを絶えず意識せざるを得ない「張り詰めた」環境の中を生きている。
そんな時代の中にあって「沈黙」をその学校の軸に据えている中高一貫校が東京都港区三田にある。
その学校は「普連土(ふれんど)学園」。通称「クエーカー」と呼ばれるフレンド派(キリスト友会) に属する婦人伝道会の人々によって1887(明治20)年に設立された伝統ある中高一貫の女子校だ。普連土学園の宗派はローマ・カトリック教会(旧教)にも属さず、かといって伝統的なプロテスタント(新教)と断言するのも難しいという。同校は日本唯一の「クエーカー」系列の中高一貫校なのだ。
1学年約130人という少人数教育をおこなっている。そのためか、教員と生徒たちの距離が近く、ひとりひとりに応じたきめ細かな指導を実践している。ちなみに、「フレンド」に「普連土」の漢字をあてたのは津田梅子の父である津田仙。「普(あまね)く世界の土地に連なる」学校であってほしいとの願いが込められているという。この願いがいまの普連土学園の教育にも反映されていて、同校は外国語教育や国際交流にも力を入れている。
■心の中の「泉」を思い浮かべる
同校には「静黙室」という森厳な静寂に包まれる空間がある。生徒たちは毎朝講堂や教室で礼拝をおこなうが、毎週水曜日は「沈黙」の礼拝となる。そして、希望者は毎月この静黙室を活用するという。瞑想する子、聖書を手に取ってそれを読む子……生徒たちは思い思いのスタイルで神の声を待つ。
同校の青木直人校長は説明する。
「クエーカーの創始者であるジョージ・フォックスは、教会という権威を通さなくても、ひとりひとりの心の内に神は語りかけると考えました。だからこそ、フレンド派の人々は神様の語りかけに耳を傾ける『沈黙』の時間を礼拝の中心に据えたのです。つまり、沈黙のうちに神からの内なる光(声)を待ち望んだのですね」
次のページへ