●「ピーツピ」「ヂヂヂヂ」なら反応 「ヂヂヂヂ」「ピーツピ」だと無反応
シジュウカラ語にはほかに「警戒しろ」を意味する「ピーツピ」や、「集まれ」を意味する「ヂヂヂヂ」という単語もあることがわかった。「ピーツピ」を聞かせるとシジュウカラは周囲を警戒して首を振る。「ヂヂヂヂ」を聞かせると、音源のスピーカーに近づいてくるのだ。
鈴木さんは、シジュウカラが二つの単語を組み立てて文をつくっていると考えた。文をつくるルール(文法)もありそうだ。そこで、実験をして確かめてみたところ、「ピーツピ」「ヂヂヂヂ」の順で聞かせると、警戒しながら近づいてくるのに、順番を変えて「ヂヂヂヂ」「ピーツピ」とすると、ほとんど反応を示さなかった。こうして、シジュウカラは語順まで聞き取って言葉を理解していることが確かめられた。シジュウカラ語には文法もあったのだ。
●シジュウカラは20以上の単語を持ち200種類近くの文をつくる!
シジュウカラの近縁種(近い仲間)にコガラという鳥がいる。鈴木さんは、「コガラ語」も研究した。シジュウカラの「集まれ」は「ヂヂヂヂ」だが、コガラでは「ディーディー」だ。この声をシジュウカラに聞かせるとどうなるだろう? 鈴木さんは実験して、シジュウカラはコガラ語の「ディーディー」の意味も理解していることを確かめた。
さらに、ヒガラという近縁種が、シジュウカラ語の「ジャージャー」を聞くと、同じようにヘビをイメージすることも鈴木さんは実験で明らかにした。シジュウカラの仲間は、自分の種に特有な言語を持つだけでなく、ほかの種の言語も理解する“バイリンガル”といえるかもしれない。
「これまでの研究で、シジュウカラは20以上の単語を持ち、それらを組み合わせて200種類近くの文(メッセージ)をつくり、仲間と話していることがわかった」と語る鈴木さん。人間以外の動物が単語や文法からなる言語を持つことを明らかにしたのは、鈴木さんが世界で初めてだ。鈴木さんによると、「じっくり観察などすれば鳥の言葉を理解できるようになる」そうだ。キミたちも野鳥の鳴き声に耳を傾け、観察してみよう!
(サイエンスライター・上浪春海)
※月刊ジュニアエラ 2020年10月号より