土星といえば、ドーナツのような環を思い浮かべる人も多いでしょう。しかし、そんな環が、今年「消えて」しまうのだといいます。なぜ消えるのでしょうか? 環が消えた土星を観測するにはどうすればよいのでしょうか? 土星観測のポイントや時期について、小中学生向けニュース雑誌「ジュニアエラ2025年5月号」(朝日新聞出版)から紹介します。
【図】「土星の環」が見えなくなる3つのケースとは?環の厚さはわずか10〜30m程度 真横からだと見えなくなる
土星は、木星に次いで大きな惑星で、太陽に近いほうから数えて6番目の軌道を回る。太陽と地球の間の距離を1とすると、太陽と土星の間の距離は約9.6とかなり遠くにある。土星の直径は地球の9倍ほど。およそ27度傾き、クルクルと回転(自転)しながら、太陽の周りを約30年かけて1周(公転)している。
土星のいちばんの特徴は、ドーナツのような環だ。傾きながら公転しているので、地球からは環の傾きが変化して見える。環を上から見下ろすように見たり、下から見上げるように見たり、環をちょうど真横から見たりすることになるのだ。そして今年は、環を真横の方向から見る約15年に一度の時期にあたっている。

土星の環は直径数㎝から数mの氷の粒がたくさん集まったもので、この環に太陽の光が反射して私たちの目に届き、美しく光って見える。ところが、環の厚さはわずか10~30m程度しかない。土星の直径は約12万㎞もあるから、いかに薄いかがわかるだろう。それほど薄い環をちょうど真横から見ると、ほとんど見えなくなり、あたかも消えたように感じられるというわけだ。
ただし、今年1年ずっと土星の環が見えないわけではない。土星の環の見え方には、土星と地球だけでなく、太陽との位置関係も影響する。土星の環が地球から見えるのは、環が太陽の光を反射しているからだ。そして、地球は1年かけて太陽の周りを1周している。その間に、土星と地球、太陽の位置関係も変わり、地球からの土星の環の見え方も変わるのだ。
土星の環が見えなくなるケースは三つある。
まず、地球が土星の環に対して真横の位置にきた場合。また、地球ではなく太陽が土星の環に対して真横の位置にきた場合でも、太陽の光が環の真横から届き、環の上下どちらの面にも光が当たらないから、環は見えなくなる。さらに、土星の環に対する太陽と地球の位置が、環の真横から見て南北に分かれたときも、環のうち太陽の光が当たる面が、地球から観測できる面とは反対になるから、環は見えなくなる。
この三つのケースのいずれかに当てはまり、土星の環が見えなくなるのは、今年の3月24日から5月7日の間と、11月25日ごろだ。
