孔子自身は母子家庭で育ち、貧しい少年時代を送っています。相談者さんは、「貧富」や「金銭」に基づいた価値観ではなく、もっと大切な考え方を子どもに教えるべきでしょう。

 孔子が自分の息子や弟子たちに教えたのは、「物事の本質を見抜く力」です。相談者さんが息子たちに教えるべきは「価格が高いイクラは、本当にいいイクラなのか?」について、自分で考える力ではないでしょうか。物の価格に振り回されるのでなく、「本当にいい食事とは何か? それはどんな味か」「今必要な衣服は何か」など、物事の「本質」に価値を見いだせるほうが、息子さんの人生は豊かなものになるでしょう。堅実な金銭感覚は大事ですが、行き過ぎると自分で考える努力をしなくなってしまうと思います。

 また、妻や義父母の「みっともない」「品がない」という発想は、他人に好まれるように見せる「外見」を気にしているのであって、「外見」より磨かないといけないのは、人の「内面」であるはずです。

 相談者さんは息子さんたちが、本当に正しい生き方ができる人、社会のためになることを心から楽しめる人になるために、どうか「本質を見抜く目を養う」という尺度で、息子さんたちに接してあげてください。

【まとめ】
人格は習慣によってつくられる。物の価格に振り回されず、物事の本質を見抜く力を養ってあげて

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山口謠司
山口謠司

山口謠司(やまぐち・ようじ)/文献学者・中国学者。平成国際大学新学部設置準備室学術顧問。大東文化大学名誉教授。中国山東大学客員教授。1963年、長崎県生まれ。大東文化大学大学院、英ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員などを経て、現職。NHK番組「チコちゃんに叱られる!」やラジオ番組での簡潔かつユーモラスな解説が人気を集める。2017年、著書『日本語を作った男 上田万年とその時代』で第29回和辻哲郎文化賞。『ステップアップ0歳音読』(さくら舎)『眠れなくなるほど面白い 図解論語』(日本文芸社)など著書多数。フランス人の妻と息子の3人家族

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