倹約家の父親の影響で、節約志向になった小4と幼稚園年長の息子たち。子どもが外食で値段を気にする様子に、妻と義父母は「みっともない」「貧乏くさい」と不満を募らせている。子どもの金銭感覚をどう育むべきか。「論語パパ」こと中国文献学者の山口謠司先生が、「論語」から格言を選んで現代の親の悩みに答える本連載。今回の父親へのアドバイスはいかに。

【相談者:小4と幼稚園年長の息子2人を持つ30代の父親】
 小学4年と幼稚園年長の息子がいる30代後半の父親です。自分の金銭感覚がケチなのか? モヤモヤしています。私の年収は700万円ほどですが、妻は専業主婦なので、留学や塾などの教育費をためるためにかなり倹約してもらっています。私はもともと必要以上にお金を出さないタイプで、その影響か、子どもたちも物の値段にとても敏感で、高価な品物を遠慮します。たとえば、すし屋では「イクラ、高いけど食べてもいい?」、ファミレスでは「もったいないから僕は水でいい」、子ども服売り場でも「バーゲンになるまで待とう」などと言います。

「しっかりした金銭感覚が育っている」とうれしいのですが、妻や義理の両親は、そんな子どもの姿がとても不快なようで、「貧乏くさい」「みっともない」「品がない」などと非難します。店員や他の客など、よそ様からどう見えるかは気にしたことがありませんでした。もっと子どもらしく食べたいものを食べさせ、好きな服を選ばせるべきでしょうか。

【論語パパが選んだ言葉は?】
・「性、相(あ)い近きなり。習い、相い遠きなり」(陽貨第十七)

・「未(い)まだ貧しくして楽しみ、富(と)んで礼を好む者には若(し)かざるなり」(学而第一)

【現代語訳】
・「人間は生まれた時は、互いに似たり寄ったりでたいした個人差はないが、後天的な習慣によって大きく違ったものになり、互いに遠いものとなる」

・「貧しくても貧乏を忘れて学問の道を楽しむ人、豊かになっても金のことを忘れて礼儀正しく生きようとする人にはかなわない」

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山口謠司
山口謠司

山口謠司(やまぐち・ようじ)/中国文献学者。平成国際大学新学部設置準備室学術顧問。大東文化大学名誉教授。1963年、長崎県生まれ。同大学大学院、英ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員などを経て、現職。NHK番組「チコちゃんに叱られる!」やラジオ番組での簡潔かつユーモラスな解説が人気を集める。2017年、著書『日本語を作った男 上田万年とその時代』で第29回和辻哲郎文化賞受賞。著書や監修に『眠れなくなるほど面白い 図解論語』(日本文芸社)など多数。2021年12月に監修を務めた『チコちゃんと学ぶ チコっと論語』(河出書房新社)が発売。ラジオパーソナリティ、イラストレーター、書家としても活動。フランス人の妻と、大学生の息子の3人家族。

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