【解説】
お答えします。30代という若さで年収700万円のお父さん、とてもがんばっていらっしゃいますね! それでもやはりまだ幼い息子さんの将来の学費を考えると、安心していられないでしょう。子どもにかけるお金を計算しはじめると際限がなくなるのはわかります。
しかし、「どれが高い、何は安い」という物の「価格」ばかりを言う親に育てられれば、子どもは何に対しても「価格」で価値を判断する人間に育ってしまいますよ。
2500年前の孔子と弟子たちの言行録である『論語』には、「性、相(あ)い近きなり。習い、相い遠きなり」(陽貨第十七)という教育論が書かれています。
「性(人間の生まれ持った先天性の資質)は、互いに似たりよったりでたいした個人差はないが、後天的な習慣によって大きく違ったものになり、互いに遠いものとなる」という意味です。相談者さんの倹約習慣、金銭感覚は、そのまま息子さんたちの「習い」となるというわけです。金融教育の進んでいるイギリスでは「7歳時点での金銭感覚は一生続く」とも言われているようですから、普遍性を備えた言葉でありましょう。
では、生まれた時、人の能力にほとんど差がないのなら、相談者さんが考える「子どもに習慣づけなければならない一番大切なこと」は何でしょうか。「堅実な金銭感覚」ですか?
孔子なら「未(い)まだ貧しくして楽しみ、富(と)んで礼を好む者には若(し)かざるなり」(学而第一)と説くに違いありません。
これは、「貧しいけれど人にへつらうことがない人、お金持ちでも驕(おご)りたかぶることのない人というのは立派な人でしょうか?」という弟子の問いに、孔子が答えたもので、
「それは結構だが、しかしまだ、貧しいから・経済的ゆとりがあるから、ということにとらわれている気味がある。貧しくても貧乏を忘れて学問の道を楽しみ、豊かになってもお金のことを忘れて礼儀正しく生きようとする人にはかなわない」
という教訓です。
次のページへ「本質を見抜く目を養う」尺度で接して