来春開校する金沢学院大学附属中学校の校舎(筆者撮影)
来春開校する金沢学院大学附属中学校の校舎(筆者撮影)


「金沢はほどよく都会でほどよく田舎。そして、文化的な環境のある街。わたしの周囲にいる、都心から金沢に転勤してきた人たちは、帰京する際にこんなことをよく口にするのです。『わが子をこのまま金沢に置いていきたい』。……それくらい教育環境的にも魅力ある街なのでしょう」

 西念先生は中学校の新設に挑戦する理由をこんなふうに説明してくれた。

「金沢は全体的に保守的な地域であり、依然として公立高校が中心です。そんな中で、中高一貫校を開設し、6年間かけて高い学力レベルを誇る生徒たちを育てたいと考えたのです」


■民間教育機関が全面協力する学習プログラム


 金沢学院大学附属中学校は2コース体制で運営されるという。スポーツや芸術などの個性や才能を伸ばすために設置される、大学付属色の強い「総合コース」。そして、国立大学・医学部・難関私大への進学に対応した「特進コース」である。

 東京をはじめとする県外入試で受験生が集まるのは「特進コース」になるのだろう。

 前出の西念先生のことばは力強い。

「特進コース1期生の目標として、全員が旧帝大もしくは医学部に合格することを掲げています」

 そのために、主要3教科である「国語・数学・英語」については、その充実を図るためにチームティーチングによるきめ細かな授業を毎日おこなっていくという。また、「共創型対話学習」という対話によって在校生たちが深い思考力・判断力・表現力を培う学習に取り組むという。さらに、生徒たちがアカデミックな学びを堪能するために、隣接する系列大学の教員が自らの研究室で直接指導もおこなうらしい。

 そして、次の点が珍しい。

 同校の教育内容の策定には全面的に民間教育機関がかかわっている。教育アドバイザーとして著名な清水章弘さんの率いる「プラスティー教育研究所」だ。

 その清水さんはこう語る。

「金沢学院大学からこの話をちょうだいしたときは、正直新しい中学校をつくるのは難しいのかな、と感じました。既に高校があってその文化がありますしね。しかし、今回中学校を開設するに当たって、学校は力量のある教員を一斉に新規に採用したのです。これは相当な力の入れようだなと感心させられました。学校側も『良い学校をつくるためなら、どんどん意見を言ってほしい。それに応えてみせる』というスタンスでしたから、その懐の深さと器の大きさにわたしは突き動かされたのです」

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