安浪:でも親は偏差値が2、3上がった、下がったで大騒ぎしちゃうんですよね。

矢萩:受験のコンサルをやっていると、「うちの子、偏差値がいくつなんですよ」って親御さんに切り出されることがすごく多いんですが、そもそもそれはなんの偏差値なの?って。先ほどお話ししたように、どの塾の、何の模試なのかによって判断は全然違ってきますし。

安浪:あとは、4科目のうち、1科目でもいいとそれがその子の偏差値だと思っている親御さんもいるけれど、そもそも偏差値って変動するし、子どもの能力は一発で測れるものではないですから。一番いい偏差値がうちの子の能力って思っていたり……低学年の親御さんに多いかな。

矢萩:先日、うちの教室に相談にいらした親御さんはその真逆でした。「うちの子偏差値30しかないんです」って言うので、用紙をしっかり見たら、算数が38で国語は60を超えていました。「そっちも認めてあげましょうよ」って。一回とった目立った数字にネガティブに翻弄されている。それは非常にもったいないし、可哀想。

■成績表から偏差値を切り取ってしまってもいい

安浪:矢萩さんは偏差値をどう利用すべきだと思いますか?

矢萩:モチベーション管理でしょうね。偏差値を見ることで「次はこれを目指そう」というモチベーションになるなら使うべきだと思う。逆にモチベーションが下がってしまうような子なら、「解きたかったのに解けなかった」と本人が言っている問題だけを解き直しさせて、成績表の偏差値が書いてある部分を切り取ってしまうこともありますよ。目標は行きたい学校、相性のいい学校に進学することですからね。

安浪:なるほど。私は模試とか偏差値って入試本番で点数をもぎ取るための練習ツールだと思っていて。算数の偏差値が48でも、この2問合っていたら53になったよね?と説明すると子どもはパッと顔が明るくなる時があるんです。本番ではミスをなくして点数を積み上げねばならないので、それを鍛えていくために使うべきかと。

矢萩:わかるな。偏差値のうまい使い方ですよね。

安浪:偏差値は決められたことがどこまでできるか、の指標にはなります。でもそれだけで子どもの学力を判断することはできないです。それって、車を買うときに「最大速度がどれぐらい出るか」しか見ていないようなもの。普通それだけで車を買いませんよね?(笑)。偏差値も同様で、はかれるものに限界があります。

矢萩:高い偏差値を取れる子はその子の才能。もちろんきちんと認めてあげるべきものだと思う。だけど、取れないことを否定するのはダメ。偏差値という指標にマッチしない子もいるし、その時の運もあるし。いろんな情報の一つとして活用するのがいちばんです。

(構成/教育エディター・江口祐子)

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