矢萩:それはありますね。あと勘違いとしては、偏差値が高い学校ほど難しい問題を出す、と思われていることかな。
安浪:まさに! 偏差値と問題の難しさ、って必ずしも連動していないですね。例えば、慶應中等部は同じ偏差値帯の学校と比べると問題の難易度はそれほど高くない。でも、大学附属、慶應ブランド、そして特に女子は募集人数がとても少なく倍率が高いことから、偏差値が跳ね上がります。よって、女子はすさまじい高得点勝負になります。
矢萩:そうそう。全員が同じ問題を解くのが模試。でも受験って学校によって問題の質や問い方が違うんですよ。だから模試でその学校の偏差値を超えていたとしても、実際に受かるかどうかは全然わからない。
安浪:だから入試問題との相性が大切という話になりますよね。ただ、算数の場合、大手塾偏差値45の子を50か55ぐらいにはもっていけるけれど、55の子を60にもっていくのはすごく難しくなります。というのも、算数は基本問題ができれば偏差値55くらいまでは取れますが、それ以上は思考問題ができるかどうかになってくる。問題の性質がガラッと変わるんですね。慶應中等部は例外ですが、算数の入試問題に関しては、偏差値が上がるほど思考題が増えてくる傾向にあります。
矢萩:それはあるかもしれないですね。国語はそこまではっきりはないかな。
安浪:国語はそうですね。あとこれは裏話になっちゃいますが、塾と学校との関係によって、塾が偏差値をコントロールすることもあります。
■「うちの子、偏差値がいくつなんです」では判断できない
矢萩:とにかく偏差値というのは絶対的な基準ではない。今、私大についていえば、大学入試は学校推薦型選抜(旧推薦入試)と総合型選抜(旧A0入試)で入ってくる学生が半分を超えている、という話もあるじゃないですか。まさに総合型選抜って偏差値は関係ないんですよ。本来、小論文に偏差値なんてつけられないですから。予備校によってはつけているところもありますけどね。そもそもそういうふうに時代がシフトしていくなかで、偏差値というものをちゃんと捉え直す必要がある。
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