「赤ちゃんはどこからくるの?」に答えられますか。いまはネットなどで性の情報に早くから触れる子どもも多く、性教育を学校に任せていたら遅い子もいます。「AERA with Kids冬号」では、親が家庭でできる性に関する伝え方を専門家に聞きました。
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性教育というと、生理や射精、受精について教える……というイメージがあるのではないでしょうか? 親世代が小学生時代に受けた性教育は、体の発達や生殖に関する基本的な話にとどまっていました。実は今の小学生もほぼ同じ。学校によってはかなり限られているようです。産婦人科医の高橋幸子先生はこう説明します。
「学習指導要領には『受精に至る過程は取り扱わない』という歯止め規定があり、性交については教えないことになっています。そのため、正しい性の知識を持たないまま、インターネットなどでゆがんだ性の情報を見て、うのみにしてしまう子どもが多いのです」
しかし、海外に目を向けると、性教育はとても広い概念で扱われています。ユネスコが定める「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」の「8つのキーコンセプト」では、人権やジェンダーなども含まれているのです。
「性教育は、自分の心と体を大切にし、性犯罪から身を守るライフスキルを養うものです。ぜひ、家庭でも科学的に正しい性の知識を教えてください」
ユネスコのガイダンスでは、5歳から段階的な性教育を行うことを推奨しています。早熟な子どもになるのでは?と心配かもしれませんが、実際には逆だとか。
「性教育を受けた子どもは、将来、性行動に対して慎重になるという報告があります。また、思春期外来で診察していると、自分だけの大切な場所である『プライベートゾーン』について学んでいれば、性被害を避けたり小さくしたりすることができると確信するようになりました」
性教育は「なるべく早めがいい」と高橋先生。家庭によっては、すでに日常会話の中で始まっていることもあるそうです。
「低学年のうちなら、お風呂で『プライベートゾーンをきれいにしようね』と言葉をかけることも性教育です。体の発達のことは高学年までに話したいですね。性交についても、できれば10歳までに教えてほしいと私は思います。まだ、いやらしいという感情を持たずに聞いてくれます。ただ、10歳以降でも遅すぎることはありません」
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