そんなときは、まわりの声を一切遮断して、一人で部屋にこもり、のんびり過ごします。中学時代から好きだった絵を描くことに没頭すると、自然と心が整っていきました。

――通信制高校から大学進学したななみさん。不登校だった日々から、どのようにして「学び直す」「進学する」という気持ちに変化していったのでしょうか?

 もともと勉強は好きでしたが、不登校になって一度つまずくと、なかなか自信がもてなくて……。できない自分が嫌になることもありました。そこで、自分に合った入試方法を選ぼうと、面接や小論文で評価される総合型選抜を目指して準備を始めました。高校では、生徒会やボランティアなどの課外活動に力を入れつつ、小論文対策の塾にも通ったんです。推薦をねらえる位置まで来ていましたが、希望の学部がなかったため、最終的には総合型選抜で進学することにしました。

――大学では社会学や福祉学を学んでいるそうですが、将来の夢はありますか?

 以前は心理カウンセラーを目指していましたが、自分が悩んでいたときに、スクールカウンセラーにかけられた言葉に傷ついた経験がありました。そのとき「本当に人の心に寄り添うには強い意志が必要だ」と痛感し、自分にはまだその覚悟がないと感じて断念したんです。今は「誰かの力になりたい」という思いを軸に、支援や福祉の分野で、人と向き合いながら役に立てる道を探しています。

普通じゃない日々が教えてくれた“自分の守り方”

――苦しみを乗り越えるなかで、大きな転機や出会いはありましたか?

 高校に入ったからといって、まわりが急に優しくなるわけでもなく、劇的に環境が変わることはありませんでした。でも、中学のころのように深く落ち込まずにいられたのは、自分の繊細さや考えすぎる性格と向き合いながら、ストレスとうまく付き合えるようになったからだと思います。それは、ただ学校に通っているだけでは得られなかった力。苦しい日々を経て、自分を守る方法を身につけられたことが、いまの私にとって何よりの財産です。

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