――どこか社会科に通じる学びでもありますね。
社会科と家庭科は、ある意味きょうだい的な関係にあるのかもしれないと私は思っているんです。
ただ、社会科はものごとをマクロな部分から内側を見ていきます。逆に家庭科は、自分の身近なところから外側に目を向けるベクトルです。視点の向け方に違いがあるイメージですね。さらに、家庭科は「暮らし」に足場を置いて、家庭や身のまわりのことなど「自分」や家族をはじめとする身近な人々との関係を中心に考えるところも、社会科との違いといえるでしょう。
自分らしく生活を営んでいけるための「基礎」がつまっています
――家庭科の授業で、何げなく送っている日々の「生活」についてあらためて考えることができるのですね。
ごはんや小物を作る授業ももちろんあります。ものづくりは生活の中に潤いをもたらしますし、料理や裁縫が「できる」のと「できない」のでは、その後の生活の質が格段にちがってきます。金銭的な面だけでなく、気持ち的にも大きな差が生まれるでしょう。ですから、実技ももちろん大切です。ただ、技能の習得のみが家庭科を学習する目的ではないのです。
家庭科には、このような実技を含めた、「生活の営み方」を考えて実践する基礎がつまっています。学びをきっかけに、自分の生活をより豊かなものにつなげていく、QOLのための教養科目ですね。
家庭科の授業は、週に一度しかありません。授業があった日は、ぜひお子さんに「今日はどんなことを勉強したの?」と声をかけてあげてください。それについて親子でいっしょに考えたり、実践したりすることで、子どもは自分の「生活」について興味をもつようになります。これこそ、将来自分の生活を楽しみ、大切にできるようになるための第一歩なのです。
(取材・文/三宅智佳)