小学5年生から学ぶ「家庭科」。いったいどんなことを勉強しているのか、子どもの教科書をのぞいたり、話を聞いたりすることはありますか? 「調理や裁縫を学ぶ教科」と思われがちですが、決してそれだけではありません。その内容は、ジェンダーの問題性への意識やマネー教育まで、時代に合わせてアップデートしています。子どもたちが学ぶ今どきの「家庭科」について、家庭科教育学を専門とする横浜国立大学教育学部教授の堀内かおるさんに聞きました。

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さまざまなかたちの家庭、家族があることを前提に学びを進める

――家庭科の学びは、時代とともにどのような点が変わったのでしょうか。

 教科書のもとになっている学習指導要領自体のサイクルが、だいたい10年間です。教科書はその中間で一度改訂が入るのですが、出版社の方針によって内容が変わる場合や、ほとんど変わらない場合があります。現在の小学校家庭科の教科書は改訂が入って2年目になりますが、私が関わっている教科書は、かなり変わりました。その目線でお話ししたいと思います。

 家庭科の大きなテーマは「家庭生活」です。ですから、そこに暮らす人たちの情景が「家族」として出てくるのですが、今回の改訂ではその「家庭」への意識が大きくアップデートされました。

 たとえば、人々が抱いているイメージとして、「家族」といえば両親やきょうだい、祖父母もいてみんな仲よく……といったステレオタイプな家庭、ひとつの家族像があるのではないでしょうか。家事を担うお母さんは、朝、会社に出かけるお父さんと、ランドセルを背負った子どもを見送って……。こうした性別役割分業が日本社会に色濃かった時代は、「生活を映し出す家庭科」という教育においては、当時のマジョリティーの姿が教科書の挿絵になることもあったのです。

 もちろん、このような情景を意図的に「理想の家庭」としてメッセージを発信していたわけではないのですが、結果として、「あるべき家族像」というメッセージを伝えることになっていたのではないでしょうか。

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三宅智佳
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