私の娘が小学生だったころ、お友達の誕生日パーティのプレゼントを一緒に選びにデパートに行ったことがあります。娘に「これにしたら?」と言ったら、「それ、持っている」「ダサい」「色が似合わなそう」と延々と選んでいる。そこで私はハッと気づいたのです。「なるほど。女性は小さいころからこうやってコミュニケーション能力を鍛えているのか、男の子はこんなことしないな」と。

 女性は女性社会で幼い頃から、お互いに気にし合う関係性を築いてきた。そのため、大人になった時には、このような「感情労働」が自然にできるのです。しかし一般的に男性はそのような経験が少なく、「感情労働」が下手な傾向にあることが考えられます。

――男性は感情労働を必要とする社会で生きてこなかったのでしょうか。

 だんだん変化しているでしょうが、少なくとも中高年層はそのような人が多いでしょう。男性は力が強ければ強いほど、女性も男性も寄ってくる。幼いころはスポーツが強ければ、友達が寄ってくるし、女の子にモテる。大きくなるにつれてリーダーシップがある男性、稼ぐ能力がある男性、お金や権力や地位を持っている男性に、男女ともに寄っていく。

 感情労働とは相手に対して気を遣うということです。感情労働を必要としないまま、あるいは、苦手なまま大人になって今まで来てしまったという男性も多かったのです。

 好きな相手に対して感情労働をしてきた女性からしてみたら、夫から気遣いされない状況から不機嫌になるのは当然なのでしょう。

フキハラの原因は「外」にあることも多い

――現代では男女ともに、感情労働が必要なってきたのですね。

 そうですね。相手が何をしたら喜ぶのか、どんなときに機嫌が悪くなるのかを見極める。難しいですけど、良好な結婚生活を維持するには大切なことです。

 妻が夫にフキハラをするということは、夫への感情労働をやめた、もしくは感情労働をする気がなくなったということです。妻の感情労働を復活させたいのなら、夫も感情労働をしなければなりません。

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