妻の不機嫌は「共働きなのに家事や育児の負担が多い」が一因

――一般的にフキハラは夫から妻へ、というイメージがあります。

 それが違っていました。実際は「妻側がフキハラをしている」ケースが多かったのです

 「相手が不機嫌になった時、自分が謝ったりご機嫌をとったりする」という夫(男性)の割合は、25~34歳が最多で43%。35歳~44歳男性では32%、55歳~64歳の男性でも22%の男性が自分から謝ったり、ご機嫌を取ったりしていることがわかりました。

 妻側はというと、フキハラの被害者である印象の強そうな55歳~64歳の妻(女性)でも7%しか夫のご機嫌を取っていません。

山田先生らが行った「親密性調査」の結果

――意外ですね。それはなぜでしょうか?

「夫婦間の男女の役割は公平であるべき」との考えが社会に浸透しつつありあることが一因でしょう。一昔前は一般的に夫が外で働き、妻が家事と育児を担当していました。今は、夫も妻も外で働いている家庭が多くなってきました。にもかかわらず、家事と育児は妻側の負担が多い家庭がまだまだ多い。夫にしてみれば、家事や育児をするにしても、妻の機嫌が悪くなると上手く回すことができない。よって、妻の機嫌をとる夫が多いのかもしれません。

――強い立場の妻が次第に多くなり、男性の立場は弱まっているのでしょうか。

 大半の夫婦はそうでしょう。1985年に男女雇用機会均等法が制定される前は、ほとんどの妻が夫の給料で暮らしていたわけですから。

 今、相手が不機嫌になって困るのは男性側、つまり夫です。共働きであろうとなかろうと、日常生活に支障をきたします。さらに日本の夫婦の傾向として、夫の財布を握っているのは妻という家庭はまだまだ多いのです。不機嫌で小遣いがもらえなくて困るのは夫でしょう。離婚すれば世間体も気になる。反対に女性は離婚しても働けるし、1人でも食べていける人も増えてきました。

男性は「感情労働」が下手な傾向にある

――夫の何に対して、多くの妻はこんなにも不機嫌になるのでしょうか。

「相手の話を最後まで聞く」「相手に気を遣う」「相手のことを褒める」など、相手との関係をよくするためのコミュニケーションの技術を駆使することは、女性のほうが得意な傾向があるでしょう。

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