そこで非常に大きな気づきがありました。一番のメリットは、子どもを怒れなくなること、それどころか敬意のような気持ちが生まれることです。
小学校4年生くらいでは、まだ親御さんの方が圧倒的に解答できると思います。でも、学年が進むにつれて、算数も他の教科もどんどん難しくなっていきます。つるかめ算も、方程式を使ってはいけませんし、例えば円周上の3人の旅人算を比で解くような問題は、経験のない親御さんには相当な難問です。また複雑な図形の問題など、一日考えても答えが出ないようなものも度々ありました。
国語も、びっくりするくらい長い問題文が出題されたり、100字を超えるような解答を要求されることもあります。小説も心情曲線の把握が難しいような、子ども自身が人生で経験をしたことがないような難しい内容の出題も、近年増えてきています。理科も社会も、高校受験のような難しい内容や多くの暗記もあります。そしてそもそも、暗記となると子どもにはかなわないかもしれません。
自分が解けないと、怒れなくなります。ですから、お子さんの成績がふるわなくても、叱ることがなくなるのです。むしろ、まだ小学生なのにこんな難しいことに立ち向かって頑張っているのかと、子どもに感動や敬意すらわいてきます。いかに中学受験の問題が難しいか、身に沁みてわかるようになりますから、お子さんの努力にも自然と目が向きます。
偏差値を見て「怒る」ことはなくなる
また、愛着形成にとってもプラスです。小学生ですから、親と過ごす時間はまだまだ嬉しいものです。嬉しい気持ちは、脳の栄養になります。さらに、親子の会話は脳の発達にとても有用である事が明らかになっていますが、親子の会話内容が、サッカーやゲームなどに加えて、勉強というのも、とても素晴らしいと思います。一緒に勉強しているからこそ、「あの問題はこうやったら解けるのでは?」など、親子で問題やその解き方について、色々考える会話が本当に増えました。
私自身、息子の中学受験においては、できるだけ一緒に勉強しました。一種の「チーム」といった感じです。子どもは親を抜かすことで自己肯定感が高まりますから、親は子どもより問題が解けなくてもかまいません。こちらは教えるために一緒にいるのではないのですから、自分が解ける必要はもちろんありません。むしろ、自分が解けないときには、子どもに解説をしてもらいましょう。6年生くらいになると、もはやこちらも並大抵の努力では解けない問題ばかりです。
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