「しなさい」と言わずに宿題をさせる方法

――言葉が違えば、物事の伝え方も変わりますね。親子関係も、日本にいるときとは違いましたか?

 それはあると思います。日本語には、相手を立てたり敬ったりする表現が多くあって、それは素敵だと思うんです。でもそれを裏返すと「上から」の言葉が多くなってしまいます。

 そもそも英語には、「〇〇先輩」とか「〇〇先生」、「〇〇部長」とか上下を示す呼び名はありません。だから「上から」にはなりにくい。

 私はあえて、自分の子どもに対して「〇〇しなさい」という命令の言葉は使わないようにしようと決めてきました。

――「しなさい」を言わないなんて無理!と感じる親は多いかもしれません。

 でも、「しなさい」と言われるとカチンときて、返ってやりたくなくなる子は多いと思うんです。だから私は「いっしょにやろうよ」とか「試してみない?」と言います。

 宿題をさせたいなら、「ママも原稿書かなくちゃいけないの。宿題するなら、ママといっしょにやらない? チョコナッツがあるよ。お茶は何がいい?」と誘います。

 仕事だって勉強だって、とりかかるときのハードルが一番高いですよね。だから、最初の一歩を促すような手助けをしたいと思っています。

――頭ごなしに言わないことを意識しているんですね。

 夫に対しても同じです。彼は靴下を廊下に脱ぎ捨ててしまうクセがあるんですが(笑)、「洗濯機まで持っていって!」って言うと角が立ちますよね。だから「靴下って、自分では洗濯機まで歩いていけないんだよね~、困ったなぁ」など、ユーモアを交えて伝えるようにしています。

アメリカ育ちの娘は大人になるのが早い

――お子さんがティーンエイジになると、価値観の違いでぶつかることもありそうです。

 ありますよ。でも「私はこうだった。だからあなたもこうしなさい」みたいな言い方はしないようにしています。

 たとえば先日、次女が「夕方から友だちと出かけたい」と言ったことがありました。私は当然「こんな時間から? 危ないじゃない」と思います。でも子どもには子どもの世界があって、守るべき関係性もある。それを無視して押さえつけることはできません。

 娘と話し合って「ホウレンソウ」つまり「報告・連絡・相談」を徹底することにして、送り出しました。「絶対にだれも1人にしないでね」「何か変更があったらすぐ連絡して」などの約束もしました。

アメリカ留学時代の久保純子さん「次女と同じくらいの歳に、私は1人アメリカに留学。両親と離れていたので、ぶつかることもありませんでした」
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