長い年月をかけた進化によって、ハリガネムシは寄生したカマキリを操って、自分が生まれた水中に戻って卵を産み子を残すというすばらしい能力を手に入れた。ところが、人間が自然環境を変えてアスファルト道路を作りだしたため、この能力が空回りすることになり、一部のハリガネムシは水中に戻って産卵できなくなってしまった。
このようなことは「進化的トラップ(進化のわなという意味)」と呼ばれ、自然の豊かさを表す「生物多様性※」を脅かす一因といわれている。
アスファルト道路で死んでいるカマキリに、そんな奥深い事情が潜んでいたなんて……。身近な虫たちの生きる姿や死に方から、ほかにもたくさんのことが学べるのかもしれない。
(画像・資料・写真提供/京都大学生態学研究センター 佐藤拓哉 准教授 文/上浪春海 イラスト/オガケン)
ジュニアエラ 2025年 2月号 [雑誌]
朝日新聞出版
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