“効果”のあるペットは何?

 ここまでお話を進めると、ある疑問が浮かんできます。

 動物といってもさまざまな種類がありますが、その中で、どの動物に効果があるのでしょうか?

 さすがに馬を飼育するのは一般的ではないので、人気の高い犬と猫に絞ってこの効果を検証していきましょう。これは日本国内の大規模調査で結果が出ています。

 日本国内の親子7万8868組を対象にしたコホート調査で、生後6カ月時点の猫と犬の飼育状況によって区別し、生後1歳時点での子どもの発達を調べました(#11)。

 すると、犬を飼育していた親子のほうが、飼育していなかった親子より子どもの発達の遅れのリスクが有意に低いという結果でした。

 ASQ-3という質問紙表を用いてコミュニケーション、粗大運動、微細運動、問題解決、個人・社会面という五つの発達領域を評価しました。つまり、この五つの領域すべてにおいて、犬の飼育をしていた親子のほうが発達が良かったのです。

 一方で、猫の飼育に関してはまったく変化が見られなかったのです。

 先ほど述べたシステマティックレビューに含まれる文献では、同様に、鳥や魚や馬に関しても子どもの発達を伸ばすという結果は出ませんでした(#10)。

 この筆者も犬が発達にいい機序としては推測の域を超えないとしながらも、犬は人間との触れ合い方がほかの動物と違って、子どもに表現のスキルを学ばせ発達させることができると推測しています。

 実際に、感情表現が苦手な子どもが犬を飼うことで、その悪影響が保護的に作用するという研究結果もあります。確かに脳性まひの子どもに対して犬を仲介してリハビリを行うと、身体を使う能力が有意に向上したことも報告されています(#12)。

 このように、子どもの発達においては、コンパニオンアニマルの中でも「犬」は別格なのです。

ペットを飼うなら余裕をもって

 今回は子どもの発達において、ペットならぬコンパニオンアニマルの有効性、特に犬の有効性をお話ししました。犬の神秘性をうっすらと感じ取れる内容だったと思います。

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