朝の時間を活用した運動遊びも減りました。背景には「教員の働き方改革も関係している」と元校長の男性は指摘します。

「朝の運動遊びのために、教員が早く出勤して校庭にラインを引き、コーンを並べるとなると、『これも勤務時間だ』と言われるようになりました。 それで朝の運動に代わって朝読書が取り入れられるようになり、朝学習にも代わり、いつしか朝の運動はなくなってしまいました」

 と肩を落とします。

0時間体育の効果を実感

 しかし、こうした朝の運動は見直されてきています。始業前の15分間、外で体を動かす「0時間体育」を実施すると、「授業の入りがよくなる」「正解数が増える」という学校現場からの報告があります。子どもの体力や運動発達について詳しい順天堂大学、鈴木宏哉(すずき・こうや)先任准教授によると、始業前に体を動かすことで集中力が高まるといいます。

「さまざまな研究で運動と脳の関係は明らかになっています。脳の機能でいうと、注意・集中を司(つかさど)る前頭前野が運動をすると活性化されます。『0時間体育』は脳科学的にも理にかなっています。朝読書も大切ですが、朝の15分間は体を動かして『遊ぶ』と、1時間目の集中力がより高まります。校庭や体育館、教室、どこでもいいですから、15分間体を動かすだけで効果を発揮します。朝の運動を取り入れるかどうかは学校管理者の考え方次第です。業間や昼休みに縦割り活動(高学年が低学年と交流する活動)として、校庭で運動遊びを企画する学校もあります」(鈴木氏)

(取材・文/大楽眞衣子)

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知っておきたい超スマート社会を生き抜くための教育トレンド: 親と子のギャップをうめる

宮本さおり,大楽眞衣子

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大楽眞衣子
大楽眞衣子

ライター。全国紙記者を経てフリーランスに。地方で男子3人を育てながら培った保護者目線で、子育て、教育、女性の生き方をテーマに『AERA』など複数の媒体で執筆。共著に『知っておきたい超スマート社会を生き抜くための教育トレンド 親と子のギャップをうめる』(笠間書院、宮本さおり編著)がある。静岡県在住。

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