待ちに待ったプールの季節。しかし近年は、維持管理コストや熱中症対策などの観点から、学校の水泳授業が減っています。中には中学校での水泳授業を廃止する自治体も。かつて当たり前だった夏休みの学校プール開放も、今ではほとんど姿を消し、わが子の泳力に不安を感じる保護者も少なくありません。子どもの体力について詳しい順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科教授の鈴木宏哉さんに話を聞きました。※後編〈運動を「する子」「しない子」格差が広がる背景は? 「小中学校で体を動かす機会が減っている」と専門家〉に続く
【写真】いざというときに命を守る「背浮き」の様子はこちら小中学校の水泳授業が減っている
晴れていても暑すぎて入れない――。近年、こうした熱中症リスクが理由で学校の水泳授業が中止になるケースも増えています。天候に左右されることに加え、夏休みのプール開放も少なくなりました。
加えて学校プールの老朽化が深刻化。利用率が低い状況が続くのであれば、莫大な費用をかけて改修するより学校プールを廃止しようと決断する自治体も相次いでいます。民間業者のプールを授業で活用する自治体も増える一方、岩手県滝沢市、埼玉県鴻巣市、静岡県沼津市などでは、中学校での水泳実技指導そのものをとりやめました。
スポーツ庁の調べによると、小中学校の屋外プールの設置数は減少しています。2018年の屋外プールの設置率は小学校94%、中学校73%でしたが、2021年は小学校87%、中学校65%とわずか3年間で大きく減少していることが分かります(スポーツ庁『体育・スポーツ施設現況調査報告』(2021年10月1日現在)。
親世代が子どもの頃のように、学校で泳ぐ経験が積めなくなってきた子どもたち。こうした現状について、子どもの体力について詳しい順天堂大学教授の鈴木宏哉さんに話を聞きました。
――学校のプールの授業が減っていますが、そもそも小中学校での水泳授業は必須ではないのでしょうか。
小学1〜6年生と中学1、2年生の水泳実技授業は必須です。ただし、学習指導要領の「なお書き」(補足説明)として、「適切な水泳場の確保が困難な場合には取り扱わないことができる」と書かれています。
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