偏差値にこだわらず、「この学校が良いと思っていたけれど、あっちの学校も良いな」という感覚を大切にしながらも、入学時点で「仕方がないからこの学校に進学する」という生徒が一人もいなくなったら、僕もこの仕事から身を引いてもいいかな、と思っているけれど、なかなか実現しないね、というところですね。

たとえうまくいかなくても、頑張ることに絶対に意味がある

山﨑 一方で、「塾生全員、第1志望合格」ということを言わなくなったら終わりだな、という気持ちも僕にはあって。

茂山 その気持ちもよくわかります。

山﨑 僕が18歳で一浪した際、なにも吐くものがないのに吐き気がするほどの感覚を味わったのに、あれを12歳の子どもに味わわせるなんて、罪つくりな仕事だなと思うことはあります。

 でも、手が届くか届かないかわからなくともジャンプをし、引っかかりそうでもなかなか引っかからないから、ときには無理もしてみる。そんな経験、大人になったらなかなかできないから、あえて挑んでみることの重要性も感じます。たとえうまくいかなくたって、頑張ってみることに絶対に意味がある。だからこそ、僕は青臭いまま、何歳になってもこのままのテンションで彼らの近くにいたい、という気持ちがありますね。

(聞き手・構成/古谷ゆう子)

灘中の「何があろうと生徒を守る」先生たちの姿勢に救われた 中学受験塾の講師たちが振り返る、自身の学校生活
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茂山起龍
中学受験塾「應修会」塾長 茂山起龍

しげやま・きりゅう/1986年生まれ。中学受験を経験し、大学附属校に入学。大学在学中から個別指導塾、大手進学塾などで中学受験指導に携わる。会社経営の傍ら、2011年、東京・西葛西に中学受験指導塾「應修会」を開校。自らも教壇に立って指導を行う。中学2年、小学6年の男子の父。X(旧Twitter)での中学受験についての発信も人気で、フォロワーは1万人を超える。X: @kiryushigeyama

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