丸いフォルムが可愛いおじさんや子どもたち、ぽつりとつぶやく言葉……独特の世界観が多くの読者に愛される、絵本作家ヨシタケシンスケさん。現在東京で開催中の展覧会「大どろぼうの家」には、ヨシタケさんの描いた、キュートでありながら、しみじみと考えさせられる新作絵本の原画が展示されています。「大どろぼう」のかっこよさとは? 絵本作家として、読者にどんなメッセージを伝えたいか伺いました。※前編<絵本作家・ヨシタケシンスケが語る息子たちの中学受験 「『逃げていい』とは言えなかったことが親としてつらかった」>から続く

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正しさってなんだろう? 「大どろぼう」が魅力的なわけ
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正しさってなんだろう? 「大どろぼう」が魅力的なわけ

――現在開催中の「大どろぼうの家」展に向けて、約2年前から絵を描き始められたとか?

 今回の展覧会は、イラストレーター、建築家、アートディレクター、映像作家など、さまざまなクリエーターの人たちが、それぞれが思う「大どろぼう」をテーマにした、作品やインスタレーション、体験型の展示を行っています。

 当初、主催の方に「どろぼうがテーマの展覧会を作りたいから参加してほしい」と、お話をいただいていて。最初は、どんなものにしようかと考えながら、少しずつ絵を描き始めました。それが展覧会の2年ほど前ですね。

 そして、僕自身がどろぼうに――しかも「大どろぼう」に盗まれたという設定で絵本を作るということになったんです。

「大どろぼうの家」展では後継者を育てるための絵本を作ろうと考えた大どろぼうにヨシタケシンスケさんが“盗まれた”という設定に。
「大どろぼうの家」展では後継者を育てるための絵本を作ろうと考えた大どろぼうにヨシタケシンスケさんが“盗まれた”という設定に。

――「どろぼう」ではなく、「大どろぼう」とした理由は?

 昔から絵本などに登場する「大どろぼう」のことを、子どもたちはみんな大好きですよね。僕も、昔から「大どろぼう」が登場する物語が好きでした。ただの「どろぼう」ではなく、「大どろぼう」は、盗みを行う悪者でもあるけれど、同時に誰かの心の中の大切なものを取り戻してくれるヒーローでもあったりする。

 もちろん、犯罪者としての側面もあります。だから、両手をあげてすごいとは言えないけれど、僕がまず、「何か大切なものをもう一度自分に取り戻すために行動する人を、『大どろぼう』と捉えていいよね」という本を作れば、今回の展覧会に参加される他のクリエイターの方たちも、それぞれが、いろんな大どろぼうを扱うことができるかなと思ったんです。

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玉居子泰子
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