丸いフォルムが可愛いおじさんや子どもたち、ぽつりとつぶやく言葉……独特の世界観が多くの読者に愛される、絵本作家ヨシタケシンスケさん。現在東京で開催中の展覧会「大どろぼうの家」には、ヨシタケさんの描いた、キュートでありながら、しみじみと考えさせられる新作絵本の原画が展示されています。「大どろぼう」のかっこよさとは? 絵本作家として、読者にどんなメッセージを伝えたいか伺いました。※前編<絵本作家・ヨシタケシンスケが語る息子たちの中学受験 「『逃げていい』とは言えなかったことが親としてつらかった」>から続く
【写真】「大どろぼうの家」展のようすはこちら(全5枚)正しさってなんだろう? 「大どろぼう」が魅力的なわけ
――現在開催中の「大どろぼうの家」展に向けて、約2年前から絵を描き始められたとか?
今回の展覧会は、イラストレーター、建築家、アートディレクター、映像作家など、さまざまなクリエーターの人たちが、それぞれが思う「大どろぼう」をテーマにした、作品やインスタレーション、体験型の展示を行っています。
当初、主催の方に「どろぼうがテーマの展覧会を作りたいから参加してほしい」と、お話をいただいていて。最初は、どんなものにしようかと考えながら、少しずつ絵を描き始めました。それが展覧会の2年ほど前ですね。
そして、僕自身がどろぼうに――しかも「大どろぼう」に盗まれたという設定で絵本を作るということになったんです。

――「どろぼう」ではなく、「大どろぼう」とした理由は?
昔から絵本などに登場する「大どろぼう」のことを、子どもたちはみんな大好きですよね。僕も、昔から「大どろぼう」が登場する物語が好きでした。ただの「どろぼう」ではなく、「大どろぼう」は、盗みを行う悪者でもあるけれど、同時に誰かの心の中の大切なものを取り戻してくれるヒーローでもあったりする。
もちろん、犯罪者としての側面もあります。だから、両手をあげてすごいとは言えないけれど、僕がまず、「何か大切なものをもう一度自分に取り戻すために行動する人を、『大どろぼう』と捉えていいよね」という本を作れば、今回の展覧会に参加される他のクリエイターの方たちも、それぞれが、いろんな大どろぼうを扱うことができるかなと思ったんです。
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