都内で中学受験塾「應修会」を主宰する茂山起龍(きりゅう)さんのAERA with Kids+連載「中学受験、その先に」。今回は、YouTube「数学・英語のトリセツ!」が登録者22万人と人気で、河合塾などで数学講師を務める迫田昂輝さんと対談。昨今の中学入試の算数問題で感じている課題や、子どもの思考力をはぐくむために必要なことについて聞きました。
【マンガ】中学受験で「偏差値の高い学校」への思いを捨てきれなかった母が、「路線変更」を決断して“わかった”こととは中学受験、算数の難易度はあがっている?
――中学受験の問題の難しさは年々アップしていると言われています。数学講師である迫田先生からご覧になって、算数の難易度はどのように変化していると思いますか。
迫田昂輝(以下、迫田) 個人的には、「難易度が上がっている」という実感はまったくと言っていいほどありません。難度が上がっているというよりは、「以前とは出題の仕方が変わってきている」と言ったほうが近いという印象です。大学入学共通テストも、これまでのセンター試験から出題の形態が大きく変わり、実生活に結びついた問題やパターンで解けないような問題が出題されるようになりました。これが中学入試の算数、ついでに高校入試数学の出題の仕方の変化につながっているように思います。
なぜ同じような問題でも出題の仕方が変わってきているのか。背景には、暗記型のパターン学習で算数の点数を取れる生徒よりも、自分の頭でしっかりと考えられる生徒がほしい、という学校側の考えがあると思います。裏を返せば、「算数は公式に当てはめれば解けるもの」と思っている子どもがものすごく多い。計算力やスピードがあっても、思考力が伴っていないんですね。
偏差値に表れない“思考”とは
――算数における「思考力」とは?
迫田 たとえば、「15分で7キロ進みます。時速は何㎞ですか」という問題があったとします。大人は「7×4で時速28㎞」と答えますよね。でも、小学生の子どもたちは「7÷15×60」と、1分あたりに進む距離をまず出そうとする。「速さを求めるには、距離÷時間をしなければいけない」と頭に叩き込まれているからです。公式に当てはめる訓練ばかりしているから、いつまでたっても思考力が身につかないのだと思います。
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