ライバルの存在が人を成長させる

――厳しい競争の世界に身を置いて来たハギトモさんだからこそ、人を認めることの大切さがわかるんですね。

 私自身、現役生活の中で出会った先輩、ライバルからたくさんの力をもらってきましたからね。そもそも勝負の世界は、競い合う相手がいてこそ成り立つもの。負ければもちろん悔しいですが、「なんて強いんだろう」「どれだけのつらい練習を乗り越えてきたんだろう」と、相手のすごさを認め、受け入れることは、人としての成長につながると思います。

 シドニーオリンピックの200m背泳ぎでは、先輩と私の日本人同士で銅メダル争いをするレース展開になり、結果、私は4位になりました。ものすごく悔しかったし、正直、今でも悔しいです。でも、レースが終わってその先輩の顔を見た瞬間、思わず口から出た言葉は「おめでとうございます」ではなく「ありがとうございました」でした。その先輩と切磋琢磨してきたからこそ自分はこの舞台に立てたんだという気持ちから、そういう言葉が出てきたんだと思います。

シドニーオリンピック、女子200メートル個人メドレーに出場したハギトモさん

長年の夢だった「絵本作家」に 

――その辺りのお話、7月に出版された絵本『ペンギンゆうゆ よるのすいえいたいかい』ともつながりますね。そもそもなぜ絵本を作ろうと思われたのでしょうか?

 小さい頃から絵本は大好きでした。特に『ぐりとぐら』のシリーズが好きで、あの中に出てくるケーキをマネして作ってみたこともあるほど。息子が生まれて読み聞かせをするようになり、子どもにも大人にもアプローチできる絵本はいいな、私もいつか作ってみたいな、と思うようになりました。

 それでもなかなか行動を起こせずにいたのですが、ある時息子に「ママって、夢あるの?」と聞かれ「やるなら今だ」と決心しました。ちょうど募集中だった文芸社さんの「えほん大賞」に応募したところ、結果は落選だったものの、編集部の方からお声がけいただいたんです。

――主人公がペンギンというのは、萩原さんのアイデアですか?

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