英語を話せたからこそ得られた幸福な時間

 授業は興味深かった。シェークスピアを読んだり、ディベートやプレゼンを学ぶ授業があったり。その過程で「自分はショービジネスの世界で生きていきたい」と考えるようになった。帰国し、アイドル活動をスタートしたが、2018年にはアメリカ・ニューヨークの演劇学校への留学を決意。

「2度目の留学も勇気のいる大きな挑戦だったんですが、培ってきた英語力が自信になりました。2年間の留学は『何? この幸せな時間は』っていう感動の連続でした」

 そう言って、岡本さんは目を輝かせる。

「最初の1年間は学校の寮で暮らしたんです。2段ベッドの2人部屋。ルームメートはメキシコ人でしたし、兵役を終えて留学してきたイスラエルの女性、日本の漫画にやたら詳しいセルビア人、孫のいるアメリカ人など、日本だけで生きていたら出会うはずのない人たちと友達になりました。みんなが英語という一つの言語で、大好きな演劇について語り合う、ありえないくらい幸せな体験でした」

 英語力は、現在の舞台の仕事においても欠かせない。

「翻訳劇をやる場合、ぼくは英語の原文も必ず読みます。彼らが英語でどんなコミュニケーションをとっているかで、登場人物の心の深い部分を理解することができる気がするんです」 

 最近ようやく、英語を学んでよかったと、素直に思えるようになったと話す。 

「親ってやっぱりすごいですね。ぼくの進む道を広げてくれました。でも……、やり方はもうちょっと考えたほうがよかったんじゃないかな(笑)」

 いま29歳。友達からの出産報告も増え、「子どもに英語を習わせたほうがいい?」と相談を受けることもある。

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