「言語習得は幼いほうがよい」という説が主流ですが、英国オックスフォード大学教授で、児童学・言語学の専門家チョ・ジウンさんは、最新の研究結果も踏まえ「幼少期から英語を学んだ人と、10歳以降に英語を学んだ人に大差はない」と言います。かわりに提唱する「10歳までに必ずやるべきこと」とは何でしょうか。韓国とイギリス両国を知る教育者であり、2人の娘の母親でもあるチョ・ジウンさんの著書『オックスフォード式 勉強感覚の育て方 頭のよさは10歳までに決まる』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)からお届けします。
【マンガ】中学受験は合否だけじゃない。母に贈った一輪の花に息子が込めたメッセージとは(全42枚)結局、言語はいつから学ぶのがよいのか?
現代の言語学と言語習得の研究は、ノーム・チョムスキー博士の言語理論から始まったといっても過言ではありません。博士の理論でつねに注目されてきたのは、時期論です。つまり、いつ学ぶのが言語発達において最もよいか、ということです。
人間の言語発達のエンジンは、大人になるほど力を失い、一定時間が経つとそれ以上作動しないことが、複数の観察結果で明らかになっています。
言語習得の時期を逃した子どもたちが、とうとう母国語ですらきちんと習得できなかった事例は多くあります。
こうした研究をもとに、言語習得は幼いほど容易であるという学説を英語教育界が打ち出したのも、自然な流れでしょう。胎教英語という方法論の登場も、そうした学説の脈絡上にあります。
しかし、はたして本当にそうでしょうか? 私が初めて英語のアルファベットを習ったのは、中学校に入る前の冬休みで、子どものように言語を自然に習得できる時期はとっくに過ぎていました。だからといって、その後英語で話したり、文章を書いたり、研究したりするのに大きな困難は感じていません。周りにいる多くの外国人教授や隣人たちも、私と同じです。幼い頃から英語に接していなくても、十分に英語を使いこなしています。
言語習得の効率が「減少」するのはいつから?
最近、アメリカのMIT(マサチューセッツ工科大学)で、初めて英語を学び始める年齢と、英語力の相関関係を明らかにするための研究が進められました。67万人が参加したこの研究結果は、「言語習得の『決定的時期』は、ごく幼い時期に形成される」という既存の学説に風穴を開けています。
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