幼少期の英語教育への関心が高まるなか、子どもに家庭で英語を学ばせる「おうち英語」が人気です。しかし、親に大変な努力が求められるだけでなく、力を入れれば入れるほど親子の関係に問題が生じてしまう危険性もあります。では、どんなところに気をつけたらよいのでしょうか? 英国オックスフォード大学教授で児童の言語発達を研究し、韓国とイギリスの両国の教育事情にくわしいチョ・ジウンさんの著書『オックスフォード式 勉強感覚の育て方 頭のよさは10歳までに決まる』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)からお届けします。

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子どもの英語学習として人気の「おうち英語」

 近年、子どもの英語学習方法として、「おうち英語」(訳注:韓国では「ママ印英語」と呼ばれる)が人気です。おうち英語とは、親(主に母親)が先生になって、家で英語を教える教育です。特定の曜日と時間を決めて、英語の映像を見せたり、音声を流したり、英語の絵本を読んだりする方法が一般的です。

 YouTubeやブログには、おうち英語に関する情報が溢れています。難易度別に教材を紹介するコンテンツもあり、子どもが一人で学習するときに活用できる映像も見つかります。「おうち英語の成功話」も盛んに繰り広げられています。そうした情報に接していると、まるで子どもの英語力の責任がすべて母親にあるかのように感じられます。

「おうち英語」は、英語を学ぶには不足した環境

 この「おうち英語」という言葉には、問題があると思います。この言葉には、実際に英語を学ぶ「子ども」があまり重要視されていません。映像を見せ、オーディオ教材を一方的に聞かせる英語教育は、子どもを英語に対して受動的にします。私たちが、字幕なしで洋画を観たり、洋楽を聴いたりするのと似たようなものです。観たり聴いたりするには楽しいですが、コミュニケーションツールとして英語を学ぶには不足しています。

 もう一つの問題は、最終的に母親は子どもの先生ではないということです。「おうち英語」には、母親の大変な努力が求められます。英語の教育法を勉強し、教材、映像、オーディオなどさまざまな資料を探すのに孤軍奮闘しなければなりません。

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チョ・ジウン
チョ・ジウン

英国オックスフォード大学東洋学部教授。児童学と言語学を用いて子どもたちが言葉を学ぶ過程を研究している。オックスフォード大学東洋学部では入試面接官として、毎年多くの優秀な学生を分析してきた。最近は人工知能時代の言語教育について研究している。

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