子どもが長い間机に向かって勉強して、空いた時間にはスマホを見たり、ゲームをしたり――。本人は休めているように感じても、実は脳は刺激やストレスを感じていて、本来の学習の能率が発揮できないといいます。「ぼーっとする時間」の大切さや意外な効用について、韓国とイギリス両国の教育にくわしいイギリスオックスフォード大学教授のチョ・ジウンさんの著書『オックスフォード式 勉強感覚の育て方 頭のよさは10歳までに決まる』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)からお届けします。

MENU 学習に本当に必要な要素は「忘却」 ぼーっとする時間は、自分の内面の声に耳を傾ける時間

学習に本当に必要な要素は「忘却」

 ベネディクト・キャリーは、著書『脳が認める勉強法──「学習の科学」が明かす驚きの真実!』(ダイヤモンド社)の中で、毎日同じ方法で集中するのは誤った勉強法だと強調しています。人間は、ロボットや機械とはまったく異なるからです。代表的な事例が、「流暢性の幻想」です。これは、同じ内容を繰り返し読むと、まだ熟知していない内容なのに、まるですべて知って記憶しているように錯覚する現象を言います。書き取ったりマーカーで線を引いたりしたとき、この落とし穴にはまりがちです。

 著者はむしろ、学習に本当に必要な要素は「忘却」であると主張します。忘却は大量の情報のうち、重要なものだけを残しておくフィルターの役割をします。何かを暗記してから一定時間が過ぎると、最近の事実や単語がよりよく思い出せるのもこのためです。

 私たちの脳には「デフォルトモードネットワーク」というものが存在します。このネットワークは、何もしていないとき、つまりぼーっとしているときに活性化します。このとき人は過去を省察し、未来を展望します。自我意識を発展させつつ、自分について深く考察する力を持つことになるのです。

ぼーっとする時間は、自分の内面の声に耳を傾ける時間

 多くの人が、シャワー中に新しいアイデアが浮かぶといいます。同じように私も、机の前では漠然としていた問題が、泳いでいるときや自転車に乗っているとき、散歩をしているときに解決することがよくあります。

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チョ・ジウン
チョ・ジウン

英国オックスフォード大学東洋学部教授。児童学と言語学を用いて子どもたちが言葉を学ぶ過程を研究している。オックスフォード大学東洋学部では入試面接官として、毎年多くの優秀な学生を分析してきた。最近は人工知能時代の言語教育について研究している。

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