テスト勉強に暗記はつきものですが、10歳前の暗記式学習は「脳の発達に悪影響」を与えるかもしれない――と語るのは、オックスフォード大学教授で児童の言語発達を研究するチョ・ジウンさん。韓国とイギリスの両国を知る教育者であり、2人の娘の母であるチョさんが、これからの子どもたちに本当に必要な能力について教えてくれます。チョ・ジウンさんの著書『オックスフォード式 勉強感覚の育て方 頭のよさは10歳までに決まる』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)からお届けします。

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暗記式学習は脳の発達に悪影響

 イギリスの子どもたちは、問題集を解きません。10歳以下の子の宿題には赤ペンをなるべく入れず、スペルが間違っていてもいちいち直しません。スペルや文法を矯正する代わりに、その子の考えや想像力を見るのです。韓国の子どもたちの体には、問題集で学習する習慣が染みついています。そのため「正解は一つ」という縛りにとらわれ、間違った答えの中にある隠れた革新の可能性を探る余裕がありません。

 下の子のジェシーは、「コンピューターで簡単にミスを修正できるのに、どうしてわざわざスペルを覚えなければならないの?」とよく尋ねます。私は親として、子どもを説得できる答えを見つけられていません。実際、スペルや文法を検証するプログラムは数限りなく存在します。スペルや文法を単純に暗記する必要がなくなった時代に、それらによって子どもたちの知的能力を測るのは不適切です。

 たしかに、暗記式教育の効果は劇的に表れます。数度しか耳にしていない歌の歌詞や物語を、子どもがそのまま覚えてしまったりもします。しかし、短期的な効果が表れたからといって子どもに暗記式教育を強要すると、脳の発達にネガティブな影響を及ぼしかねません。
 脳の発達学によると、脳は使い方によって絶えず変化します。これを、脳の「神経可塑性」といいます。この神経可塑性は、脳が楽しく刺激されたときに極大化します。暗記のような受動的な反復は、脳を退屈させてしまいます。

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チョ・ジウン
チョ・ジウン

英国オックスフォード大学東洋学部教授。児童学と言語学を用いて子どもたちが言葉を学ぶ過程を研究している。オックスフォード大学東洋学部では入試面接官として、毎年多くの優秀な学生を分析してきた。最近は人工知能時代の言語教育について研究している。

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