あまりないですね。会社の年配層も男女ともに子育てにかかわってきた世代だから理解があるし、まだ子育てを経験していない若い人は「自分も子どもができたらこういう働き方になるのか」と思うだけです。そこにはスウェーデンの「人権意識」が大きく関わっていると感じます。
――個人の意識を変えるために何が必要でしょうか?
男女平等に関して言うと、スウェーデンでも、男性のほうがテクノロジー関係や土木関係など、給料が高い職に就く割合は多く、女性は看護師や生徒の年齢の低い教育関係の仕事をする人が多いという違いはあります。そのため全体を見れば女性のほうが収入が低いという現実はあり、完全に「平等」ではありません。
それでも性別や年齢、職業や宗教に関係なく、すべての人を尊重するという考えが基本にある社会です。女性がもっと生きやすいように、子育て世代がもっと暮らしやすいように、性的マイノリティの方々が生きやすいように、移民の方々が暮らしやすいようにといろいろな改善を望む声が上がりますが、どれも根底では「全員に同じ価値がある」という国の価値観とひとつにつながっているから強いんですね。
日本ではそういう運動がバラバラに行われていて、個別に闘っている印象を受けます。大きな話になってしまいますが、国としてどういう価値観をもっていきたいかを考えるのは非常に重要なのではないでしょうか。女性「だけ」、子育て世代「だけ」もっと境遇を良くしてほしいと望んでも限界があるように思えます。
(取材・文/玉居子泰子)
※前編<スウェーデンの子育て夫婦は17時に帰宅! 長期休暇中は「代理」を雇う 移住者に聞く日本との違い>はこちら
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