こうした制度があることで、30代、40代男性の90%以上が両親休業を取得するようになりました。男女で差があるのではなく、多くの人が同じ立場に立てるような制度が整っていくことが大切なのだと思います。会社でも男性の先輩が当たり前に育休を取るので、後輩たちは男女とも「いつか自分の番だ」という気持ちを持っています。

 また、育休は1時間から取れるのですが、取得する際は事務的には職場を通さずに直接、国の機関である社会保険庁に申請するんです。スマホを使ってオンラインで申請ができるので「会社の事務を増やして迷惑をかけている」と感じることがないんです。 あとは子どもが病気の時に取得できるVABという制度もあり、子どもの看病で有休がなくなるということもありません。5週間の夏休みは完全に休みとして使います。

 日本にもこれらのしくみができれば、両親ともに子育てに関わることになり、休みを取ることが申し訳ないと悩む人たちが、少しずつ減っていくのではないでしょうか。

――日本でも男性の育休取得率がたびたび話題になりますし、少しずつ増えてきてはいますが、スウェーデンほどではありません。

 スウェーデンには働きながら子育てをする環境が整っていると、うらやましく感じる人もいるかもしれません。でも、日本も国としての制度はかなりしっかりしているほうだと感じます。あとは企業と個人がその制度を100%活用すると決められるかどうか。「スウェーデンと日本は違うから……」とあきらめず、会社そして一人ひとりが意識を変えていけば、日本ももっと働きやすい社会が作れると思っています。

一人ひとりの意識を変えてすべての人を尊重する社会に

――日本では、子育て中の親が社会的にも制度的にも優遇され、職場でも特別な配慮を受けているのではないか。その一方でフォローする側の負担が増えていることを批判する「子持ち様論争」がSNSを中心に話題になりました。スウェーデンではそういうことはないのでしょうか。

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