2025年2月、東京都八王子市にある鑓水中学校では、教職員や保護者・地域の方を対象とした対話カフェを催す計画がされていました。そのカフェでコーヒーを出していたのは、長く不登校に悩んできた特別支援教室に通う中学2年生の男子生徒。特別支援教室での学びをきっかけに、自分の「好き」を形にしようと一念発起した生徒の変化は、どのように生まれたのでしょうか。取材班も、淹れたてのコーヒーをいただきながら、カフェの様子を取材しました。

MENU 長年不登校だった生徒が学校でコーヒーを振る舞ったわけ コーヒーを通して気づいた対話の楽しさ 一歩を踏み出す挑戦が友だちを運んできてくれた

長年不登校だった生徒が学校でコーヒーを振る舞ったわけ

 2月の午前9時。ひんやりした廊下を進むと、ひとつの教室から、コーヒーのいい香りが漂ってきます。保護者や地域の方を対象にした「鑓水中カフェ」。カフェでコーヒーを淹れているのは、中学2年生のカイくん(仮名)です。

 調理室に置いた二つのコンロでお湯を沸かし、訪れてくる人たちの好みの香りや苦味を聞き、丁寧にドリップコーヒーを淹れてくれるカイくん。

 カイくんをサポートするのは、同じくコーヒー好きのお父さんと、いつもカイくんの気持ちに寄り添ってくれるお母さん。まだ小学生の妹も、お揃いの手作りTシャツを着て手伝ってくれています。

 実は、カイくんは小学5年生の時から中学2年に至るまで、いわゆる「不登校」の状態が長く続いていました。今も、大勢の同級生と同じ教室にいるのがつらいといいます。

 そんな彼が、たくさんの大人にコーヒーを振る舞うようになったきっかけはなんだったのでしょう。

 カイくんがコーヒーを淹れるきっかけになった先生にお話を聞きました。

「鑓水中学校の学校運営協議会とPTAは、学校公開の日に保護者や地域にお住まいの方々に向けて、カフェ形式の対話会を企画していました。そんな時、私が特別支援学級で受け持っていたカイくんが、無類のコーヒー好きとわかって。だったら、そこでコーヒーを淹れて振る舞ってみようということになったんです」

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玉居子泰子
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