おすすめポイント

 恐竜といえば大きくて迫力があるものなのに、おもちゃの恐竜のアローは小さくてかわいい。夜のしーんとした公園で、「むくむく。もこもこ」と砂を盛り上げ、ひょこっと頭を出すアロー。つづいて、首、短い前足、胴体からしっぽ……と砂から出るしぐさは愛らしさ満点で、冒頭から、藤原ヒロコさんが描くアローをすっかり好きになってしまいます。

『まいごのアローおうちにかえる』(竹下文子 作/藤原ヒロコ 絵/佼成出版社 刊)

 何しろ小さなアローなので、本物のアロサウルスが走るなら「どし・どし・どし」のところ、アローは「とことこ・とことこ」で精一杯の速さ。車がびゅんびゅん走る大通りなんて危なくて渡れません。 

 それでもえいっと飛び出そうとしたところを助けてくれたのが、近くの魚屋さんのネコ、ウオマサ。信号が赤になる前に渡りきれないと見ると、アローをくわえて渡ってくれます。アローより大きくて、人情味のある町のネコたちの活躍も、わくわくするポイントです。

 幼年向けの読み物を多数手がける竹下文子さんの言葉はわかりやすく、文章も会話も小学校低学年にぴったり。すべての見開きページに挿絵があり、お話の理解を助けてくれます。

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